コラム TAKESHITA SANGYO

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コラム 賢人の思考 ~「こころの立ち直り力=レジリエンス」の鍛え方~

2019.11.05

熊倉 百音子氏

今回はポジティブ心理学等をベースにした人財開発・コミュニケーション教育を企業・医療機関で行っておられる熊倉 百音子先生に『「こころの立ち直り力=レジリエンス」の鍛え方』についてコラムを書いていただきました。

ストレス社会をどう生きると幸せになるのか、人間にとって永遠のテーマだと考えます。

哲学者アラン(Alain)は「幸福論」の中で、「悲観主義は感情で、楽観主義は意志の力による」・「幸福になりたいと思ったら、そのために努力しなければならない。無関心な傍観者の態度を決め込んで、ただ扉を開いて幸福が入るようにしているだけでは、入ってくるのは悲しみでしかない」と述べています。熊倉先生が言う「ストレッチ」と合致するのではないでしょうか。

どのようなストレッチ(意志)を行えば、ストレスから解放されてポジティブになれるのか、熊倉先生が分かりやすく教えてくれています。みなさんご一読ください。

 

【著者】

熊倉 百音子

【プロフィール】

東京生まれ ㈱クオリティ・アンド・バリュー代表取締役

コミュニケーションインストラクター

NLPマスタープラクティショナー

ドイツ・ポジティブ心理学マスタープラクティショナー

立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科修士課程修了 

立教大学社会デザイン研究所 研究員 (TEAM DIAGRAM所属)

著書 「誰も教えてくれなかった 患者さんの心をつかむデンタルコミュニケーションメソッド」(医歯薬出版社・共著)

 

熊倉 百音子先生のFacebookページはこちら

https://www.facebook.com/profile.php?id=100002332389109

 

立教大学社会デザイン研究所 熊倉 百音子先生の研究内容

https://www2.rikkyo.ac.jp/web/social-design/member/kumakura.php

 

 

 

「こころの立ち直り力=レジリエンス」の鍛え方

 

NHKの「逆転人生」という番組をご存知でしょうか。

逆境につぐ逆境に苦しみながら主人公が起死回生の大逆転で成功をつかむまでの物語をつづったトーク・バラエティ番組です。司会の山里亮太さんらの軽妙なトーク力がこの番組を面白くしている要因でもありますが、何よりも、それまでの失敗続きの人生を大逆転させる主人公たちが魅力的です。

彼らは最初からヒーロー・ヒロインではない、ごく普通の人たちです。悩みや弱さを持った私たちと同じような人たちであることが一層の親近感と感動を呼ぶのかもしれません。そのバックグラウンドは実にさまざまです。

貧しさや偏見、障がいに苦しんでいた過去を持っていたり、

学校の落ちこぼれだったり、

会社で期待されない部署の社員だったり。

しかし、全員に共通するのは素晴らしい「レジリエンス」の力を持っていることです。

「レジリエンス」とは一言でいえば、「厳しい状況の中でもポッキリ折れずに復活する心の力」のことです。

「逆転人生」の主人公たちは、あらゆる逆境の中にあっても粘り強く可能性を探り出し、諦めずに困難をチャンスに変えていく、という共通の力を持っていると言えるでしょう。

 

 

  • 「レジリエンスとポジティブ心理学」

「レジリエンス」はポジティブ心理学の研究分野でもあります。ポジティブ心理学ってなに?という方のために少し解説しますと、従来の心理学の研究分野は、うつや精神疾患のように、心がマイナスに傾いた状態をどうやって治療し元通りにしていくか、ということでした。

一方で、社会で普通に生活している人たちの能力を最大限に引きだし、幸福(well-being)に生きるための心理学の研究というのはそれまでなかったのです。1998年当時全米心理学協会の会長だったマーティン・セリグマン博士は、人々が自分の才能を伸ばし、人生を豊かにするための心理学分野を新たに構築しようということで始まったのがポジティブ心理学です。

それ以来、ポジティブ心理学は様々な研究者の手により発展しています。ハーバード大で人気の授業を行ったタル・ベン・シャハー、ポジティブ感情を研究しているバーバラ・フレドリクソン、フロー研究の第一人者であるミハイ・チクセントミハイなど、研究者の講演や書籍は日本でも人気になりました。

 

かく言う私も7年ほど前からドイツのポジティブ心理学協会で学び、企業や学校でポジティブ心理学の知見を取り入れたトレーニングやチームビルディングのワークショップなどを行ってきました。

 

 

  • 「ストレスと感情」

「レジリエンス」の力をつけるには、困難な中にあってもポジティブな面を見出すことができる、こころの柔軟性を持つことが大切です。しかし、現代に生きる私たちはそれが難しい、と言われています。その原因のひとつは高ストレスの社会情勢です。満員電車、雇用の不安定さ、難しい人間関係、どこまでも追いかけてくる仕事のメール、SNSの氾濫・・・私たちの脳は、こうした新時代のストレスに対応できる機能を備えていない、という説もあります。ストレスが原因でうつ状態や疾患に陥ることも多いことはご承知のとおりです。

高ストレス社会にあってもイキイキと生きる術は現代人にとって大切なスキルになってくるでしょう。そのスキルのひとつがこころのセルフケアではないでしょうか。

ストレス状態から抜け出し、ポジティブで良い状態に自ら持っていくこと。健康に良い食事をとることや1日の終わりにストレッチをして体をケアするように、こころの状態を整えておくことも今後はより一層大事なのではないかと思います。 

 

 

  • 「3つのよいこと」

さて、ストレス対策として「レジリエンス」力をつけるには様々な方法があります。そこで、私が現在行っている医療系専門学校の心理学授業の一部をご紹介します。

 

それは、「3つのよいこと」というワークです。これは寝る前の10分程度、1人で行えるものです。

『今日1日を振り返って、「よかったこと」を3つ挙げて書き出して下さい。これを1週間続けてみましょう。』

 

たったこれだけです。それでなにが変わるの?と疑わしく思われるかもしれませんが、学術的な裏付けもあるワークです。この「3つのよいこと」は落ち込みやイライラなど、ネガティブな状態を軽減し、よい気分を常態化させます。実際に書くとすれば、こんな感じです。

 

「今日は電車の中でおばあさんに席を譲ったら降り際に、有難う、と丁寧にお礼をされた。

なんだかいいことしたって思えた。ちょっと疲れていたけど気分がいい!」

 

自分の良い感情も書いておくとよいでしょう。

大げさなことでなくてよいのです。1日の終わりに日記をつける習慣を持っている方も多いとは思いますが、漫然と1日を振り返るのではなく、「良い気分」を軸にして1日を思い出すことでものの見方が変わっていきます。

 

 

  • 「こころもトレーニングできる」

これはネガティブに偏りがちな私たちのこころの状態をポジティブに変えていく目的で行うものです。残念ながら、ポジティブな感情はネガティブな感情に比べて気付きにくく長続きしないという特徴があります。だからこそ、ポジティブな感情を意識するトレーニングが必要になってきます。こころの柔軟性は筋肉と一緒で日々、少しずつでもトレーニングをすれば変わってくるものです。

 

脳の働きのひとつに、目的が定まると類似性や近似性を無意識に探し出すという特徴があります。「よかったこと」を探し出すとひとつだけではなく他の「よかったこと」にも気付くようになり、これを繰り返すことで意識がポジティブになっていきます。それを寝る前に行い習慣化することでさらに定着するのです。

ポジティブな感情の利点はレジリエンスの力を高めることの他に、私たちの思考と行動のレパートリーを広げてくれる、身体的リソース(よく眠れること)を増やすなどもあり、その恩恵は計り知れません。

 

「レジリエンス」の力を身に着けるには、難しいことをする必要はありません。寝る前のほんの少しの時間、自分との対話をするつもりで「3つのよいこと」やってみてはいかがでしょうか。

 

熊倉 百音子氏

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