コラム TAKESHITA SANGYO

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コラム 賢人の思考 ~会社で「妖精さん」と呼ばれる人たち~

2020.03.02

2017.02.13-22

 

 

 

 

 

「おじさん学」を研究されている石川 雄一先生に、『会社で「妖精さん」と呼ばれる人たち』というテーマでコラムを書いていただきました。

このコラムから生涯賃金とはどういう構造になっているのか、どうしたら従業員がやる気を持って働くのかを改めて考えさせられました。

ご自身も長年サラリーマンを経験された石川先生のお言葉には説得力があります。

人生の先輩の文をぜひご一読ください。

 

 

 

 

 

【著者】

石川 雄一 氏

石川氏①

【プロフィール】

慶應義塾大学経済学部卒業後、東京海上火災保険株式会社(現:東京海上日動火災保険㈱)に入社。主に国内営業畑を歩み、近畿業務推進部長、札幌中央支店長などを歴任

55歳で自動車メーカー保険代理店の常務取締役となり、経営と人材開発に尽力

退任後、大型自動車メーカー関連会社参与を経て退職

2017年に立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科入学し、2019年3月に修士課程修了。MBA(経営学修士・社会デザイン学)

2019年4月からは同研究科研修生となり、企業組織に関する研究を継続し、セミナー講師など精力的に活動している

 

 

 

 

 

 

テーマ:会社で「妖精さん」と呼ばれる人たち

 

○妖精さんとは

2019年11月12日の朝日新聞に「動けぬ会社の妖精さん」という記事が掲載されていました。「老後レス時代 エイジングニッポン」というコラムの第二回です。

妖精さんとは、あるメーカーに勤める「50歳代後半で、働いていないように見える男性たち」のことだそうです。1970年代以降に採用され、工場勤務などを経て事務部門に配置転換された、まさに日本の製造業栄光の時代を担ってきた人たちといえます。それがいまや仕事へのやる気もなく、ただ定年を待っているだけに見える。会社は解雇もできず、一緒に働く若手はストレスがたまり、陰で「妖精さん」と呼んでいるのだとか。

 

立教大学経営学部の中原淳教授は、これは個人の問題ではなく古くからの日本企業の共通する現象だと述べ、次のように解説します。

若手の頃は低い賃金で頑張って生産性を上げる、しかし中年期に差しかかると頭打ちとなり、賃金が生産性を上回るようになる、定年制企業ではこうした給与体系が一般的です。若手の頃会社に対して貯めてきた債権を、後半で取り返す仕組みだから中途退職したら損をする、つまり囚われの状態(ホステージ)になっているというわけです。

 

「妖精さん」とは下図の「働かないおじさん」のことを示します。この図は出所に記載の通り、1989年の加護野教授の論文で述べられた理論に中原教授が加筆したものです。つまり、この問題は30年以上前から指摘され、労働市場の流動化を阻害していると言われてきたことですが、いまだに「新卒一括採用定年制」をやめる大企業はありません。

 

 石川氏②

 

実はこのカーブは、もともとアメリカのエドワード・ラジアーが提唱した理論(1979)に基づきます。日本でも最近70歳まで働こうという論調が増えてきましたが、アメリカでは1978年に「雇用による年齢差別禁止法」の上限年齢が70歳に引き上げられ、65歳定年制が違法となりました(1986年には上限年齢は撤廃された)。こうした状況下で、ラジアーは定年退職制度の存在理由を明らかにする論文を発表したのです。

 

○日本とアメリカでは賃金の考え方が異なる

アメリカの経営者は、若手社員に多くの賃金を支払うと「ズルケル」※と考えていました。だから初めは低めに設定して、不足した部分を将来の高い賃金と退職金に含めて支払うことが合理的だったのです。日本の定年制でも同様の賃金カーブとなっていますが、必ずしもラジアーの考えた背景とは同じではないと思います。日本では、賃金を高くすると「ズルケル」という発想は少なく、むしろ終身雇用を前提にした、生活設計に沿った生涯賃金の合理的な支払い方だったといえます。いうなれば、社員は会社に生涯の経済的人生設計までを預けていたともいえます。しかし近年、社宅等の福利厚生製度は削減され、退職金も401kのような自助努力が求められる時代となり、この制度の根幹は既に崩壊しつつあり、終身雇用は維持が困難になってきました。

 

○社員のモチベーションとは何か

さて、このグラフによる説明は、働かないおじさんを生む理由として、なかなか説得力があるように見えます。しかし果たしてこれがやる気を削ぐ主たる理由なのだろうか、と筆者は疑問を覚えました。従業員のどれ程が、自分の生涯の賃金体系がこうした仕組みになっていることを知っているだろうか。社員のモチベーションは、賃金によってどれほど変動するだろうか。

成果主義人事制度が導入され、年功賃金は変化してきました。しかし成果主義が有効に機能しているという評価は少ないと思います。その理由は、社員のモチベーションを左右するのは、実は金銭とは別の要素が大きいからです。最も大きな要素と言われるのが「内発的な動機付け」、簡単に言えば「やりがい」であり、成長への実感だと思います。

 

中高年社員が仕事への成長動機を見失い、やりがいを感じなくなった、ここに妖精さんが生まれる真の原因があるのではないでしょうか。このあたりに関しては、また別の機会に考えてみたいと思います。

 

※ズルケルとは、東京の方便で「ずるく構える、怠ける」という意味。

2017.02.13-22

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