コラム TAKESHITA SANGYO

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コラム 賢人の思考 ~パワハラは法律違反になりました~

2020.09.28

2017.02.13-22

コロナ禍であまり世間では課題として取り上げられていませんが、今年6月に「パワハラ防止法」が施行され、企業にパワハラ防止に努めることが義務付けられました。

そこで危機管理の専門家である八星 篤先生に、企業が取り組むべきパワハラ防止について執筆いただきました。八星先生が銀行支店長時代の体験をもとに本当に大切なことを伝えてくれています。

マネジメントに携わる者は、常に部下が上司に相談しやすいコミュニケーション環境を普段からつくっておくことが大事だと改めて感じました。みなさんもぜひ読んでみてください。

 

※タケシタが取り組むコミュニケーションの活動(下記URLご参照)

https://www.r-station.co.jp/trc/

https://www.r-station.co.jp/recruitment/

 

 

○著者

つくだ社会科学研究所

https://www.8-star.jp/index.html

代表 八星 篤(はちぼし あつし)氏

 

八星 篤氏

1972年 東京大学経済学部卒業

1972年 第一勧業銀行入行
1996年 広報部長
1997年 企画室長
1998年 横浜支店長
2000年 執行役員調査室長 兼 第一勧銀総合研究所専務取締役
2002年 みずほ銀行執行役員調査部長 兼 みずほ総合研究所専務取締役 
同年 みずほ銀行退職
2003年 株式会社サカタのタネ監査役(社外)就任
2008年 株式会社サカタのタネ取締役(社外)就任
2013年 株式会社サカタのタネ取締役辞任
現在、危機管理、経済・金融等の講演・研修活動に従事

 

現在、危機管理、経済・金融等の講演・研修活動に従事 。なお、八星氏は高杉良著「金融腐食列島」シリーズの登場人物のモデルの一人と言われている(八星氏が第一勧業銀行総会屋事件時の広報部長時代がモデル)

 

 

○テーマ

「パワハラは法律違反になりました」

パワーハラスメント(以下パワハラ)については昨年の法改正によって、職場でのパワハラ防止措置などが、事業者の義務とされ、今年6月から施行されています。

大きな柱は

①事業者はパワハラ防止のため、パワハラ被害者からの相談に応じ、適切に対応するための体制の整備等必要な措置を講じなければならない

②事業者は被害者が被害等を相談したことなどを理由に、解雇等の不利益な取り扱いをしてはならない

の2点です。

 

法律では①については「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」

 

②については「事業主は、労働者が前項の相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」と規定されています。

 

パワハラについてはこれまでも厚労省から解説や指針は公表されていましたが、会社や上司等が部下に行う教育・指導・訓練・研修のうちで必要なものとパワハラ行為との区別がつきにくい(セクハラの方が禁止行為を明確にしやすい面があり、セクハラ禁止の法制化の方がだいぶ先行しましたが、それでも、様々な議論が行われ、禁止行為の見直し・追加がなされています)という理由で法制化はなかなか進みませんでした。ただ、パワハラによる自殺や心の病の増加があり、今回法制化に至りました。

 

法律は事業者が直接的な対象となっていますが、セクシャルハラスメント(以下セクハラ)と同様に、実際にパワハラ行為を行うのは部下を持つ職員の場合が大半ですので、こうした立場にある職員はパワハラを行ったことにより会社の規定で処分を受けることになります。この点からも、企業はもちろん、一定の職員も法律や本年1月厚労省が公表した「パワハラ防止のための指針」の内容を理解しておく必要があります。

 

もっとも、法律を読んだだけでは、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害される行為を具体的にイメージすることは難しいです。厚労省の「パワハラ防止のための指針」では、法律よりは多少具体的なイメージが把握しやすくなっていますので、「パワハラ防止のための指針」の概要をご紹介します。多分、既に、会社の研修等でご存じかも知れませんが、こうしたものは、私の経験でも、なかなか頭に入りにくいものです。何度でも、確認の意味合いを込めて、チェックしてみてください。

 

職場において行われるパワハラは①優越的な関係を背景とした言動・行動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものですが、パワハラ防止指針では「労働者」には、正規雇用労働者以外の全ての労働者が含まれるとされ、パート、派遣職員等も含まれることは明確になっています。一方「優越的な関係を背景とした言動」「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」「労働者の授業環境が害される」に関しては、基本的には社会的通念等をベースとした表現になっており、必ずしも明確ではありませんが、具体的なパワハラ行為として次の6類型を明示しています。

  • 身体的な攻撃(暴行・傷害)
  • 精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)
  • 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
  • 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
  • 過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
  • 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

 

「身体的な攻撃」はそもそも暴力行為ですから犯罪なのですが、ここでわざわざ取り上げたのは、職場の上下関係があると暴力行為も告発しにくいという趣旨だと思います。

「精神的な攻撃」については脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言が列挙されていますが、これは加害者と被害者の認識の差が大きい可能性があります。脅迫等の意識がない、でも、被害者はパワハラと受け止めるかもしれません。この6類型でも「過大、過小、過度に」とされていて、どの程度という基準が明示されているわけではありません。すべてのケースについて法令や指針で明示することは、そもそも困難であり、それぞれのケースで社会通念やその時の状況によって冷静かつ常識を持って対処することが企業にも個人にも求められています。「職員はパワハラを行ったことにより会社の規定で処分を受けることになるでしょうから」と申し上げましたが、それはパワハラ防止指針で明示されています。

 

すなわち、事業者が講ずべき措置として

①職場におけるパワーハラスメントに係る言動を行った者については、厳正に対処する旨の方針および対処の内容を就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること

②職場におけるパワーハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、行為者に対する措置を適正に行うこととされており、パワハラと社内で認定されれば相応の処分がされることになります。

 

厚労省作成のパンフレットでは、上記6類型について、それぞれパワハラには該当しないと考えられる事例も示されています。例えば「精神的な攻撃」についてはA.社会人としての基本的なルールに反した行為(遅刻など)が再三の注意でも改善されない場合に、一定程度強く注意をするB.企業にとって重大な問題行動がみられた場合に、一定程度強く注意をする。「人間関係からの切り離し」についてはA.新規採用した人材を育成するため、短期間集中的に別室で研修などを実施するB.懲戒規定に基づいて処分を受けた従業員に対し、職務復帰に向けた一時的な研修などを別室で実施する。

「個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)」についてはA.業務上、従業員に配慮するために家族の状況などについてヒアリングを実施するB.従業員の了解を得たうえで、業務上必要な個人情報を人事労務部門に伝達するというような事例が挙げられています。

 

しかし、このパワハラには該当しないと考えられる事例についても、これから様々な事例や判例が出てきたり、社会の常識が大きく変化した場合には内容が変化する、また、これを自分の都合の良いように拡大解釈したり、短期間、一時的という条件を外れるような事例は、認められない可能性が高いことは気をつけておかなければなりません。少なくとも、これから厳しくなることはあっても、緩くなることはないと思うことがリスク管理の基本です。

 

私が現役だったころも、今、問題とされているパワハラ行為は現実に存在し、心の病も相当拡大していましたが、組織としての取組はありませんでした。一方、セクハラは既に法律で規制されていましたが、組織に十分意識が浸透しているとは言えない状況でした。当時、私も現場の責任者として、セクハラの処理で失敗したことがあります。セクハラ問題について、本部の窓口ではなく、現場の管理者(私は支店長でしたが)に直接相談し、解決を求める場合もありました。被害者から直接訴えられた私は、社内のルールに沿って被害者の話、加害者の弁明をそれぞれ聴取しました。その結果、これはセクハラ行為に当たると判断しました。被害者は「即時、支店から転勤すること」を求めましたし、加害者についても、私は処分が必要と考えました。ただ、どちらも支店長の権限を超えるものでしたので、人事部に事件内容を通報しました。しかし、人事部への通報について、事前に被害者の了解を得ることを失念し、翌日大慌てで被害者に通報の了解を求め、幸いにも応諾が得られ事なきを得ました。後で、本部のセクハラ担当者に聞いてみると、当時、現実にも、被害者の事前の了解を得ずに人事関係部に通報したため、民事裁判で責任を追及される場合があったようです。

 

教育・研修についても苦い経験をしました。前の支店でセクハラの事例を体験したこともあって、次の支店では、管理職に対する教育・研修に力を入れました。そのうち、管理職から「支店長、お話の内容は耳にタコができるほど聞いたのでよく分かった。決してそんなことはしないから安心してくれ」と言われました。そこで、私もこの教育・研修はこの辺で終了しても、大丈夫だろうと思いました。しかし、実際には、この後、セクハラ事件が起きました。その時の自分の失敗を振り返って、2点大きな反省があります。①教育・研修といっても、単に社内規定の説明を繰り返すだけで、実例に即した具体的なものになっていなかった「耳にタコができても、頭と体でちゃんと理解していないとセクハラは起こる」②事件後の調査ではセクハラの前兆があったことが分かりましが、私はそのことを把握していませんでした。店内の状況の観察や職員からの聞き取りが不十分で、職員も私には話しづらい雰囲気があり、支店内の実質的なコミュニケーションがうまく機能していませんでした。

 

社内規定、実務に即した教育・研修、気軽に相談しやすい職場環境が一体として機能する必要があると感じました。今回のパワハラ防止も同じ側面があるのではと思っています。

2017.02.13-22

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