竹下産業株式会社

コラム TAKESHITA SANGYO

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コラム 賢人の思考 ー衆知を集めて一人で決めるー

2021.12.29

2017.02.13-22

定年後も大学院に通いながら学びの歩みを進められておられる石川雄一先生に「衆知を集めて一人で決める」というテーマでコラムを書いていただきました。この言葉にはどのような意味が込められているのでしょうか。

時代の変化とともに、企業の組織のカタチも大きく変化しています。当社でもそれは同じ。企業組織の形態が変化する中で、今後どのようなマネジメントが必要で、どのような職場環境(=人間関係)をつくっていけばいいのかを考える良い機会となります。皆様もぜひご一読ください。

 

 

【著者】

石川 雄一 氏

石川 雄一 氏

 

【プロフィール】

慶應義塾大学経済学部卒業後、東京海上火災保険株式会社(現:東京海上日動火災保険㈱)に入社。主に国内営業畑を歩み、近畿業務推進部長、札幌中央支店長などを歴任

55歳で自動車メーカー保険代理店の常務取締役となり、経営と人材開発に尽力

退任後、大型自動車メーカー関連会社参与を経て退職

 

2017年に立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科入学し、2019年3月に修士課程修了。MBA(経営学修士・社会デザイン学)

現在立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科博士課程に在籍し、企業組織に関する研究の傍ら、セミナー講師など精力的に活動している

 

テーマ:衆知を集めて一人で決める

 

以前ライフストーリーのことを書きましたが、筆者の40年を超えるサラリーマンライフを振り返ると、キーワードに遭遇しそれに助けられたという経験がいくつか思い出されます。中堅クラス以上の皆さんは、たぶん同様の経験があるのではないでしょうか。それは本の中で出会った言葉や、お客様あるいは先輩や同僚たち誰かの一言かもしれません。ある瞬間にピンとひらめいた、あるいは心に刺さった、そんなフレーズをお持ちではありませんか。

 

筆者が40歳台後半に大きな組織のマネジャーとなった時期に遭遇したのが「衆知を集めて一人で決める」[1]というフレーズでした。担当する組織は広域で、10か所以上のエリアを担当する支社(営業所のこと)を統括していました。それぞれ支社は、支社長(マネジャー)とメンバー数人位の規模でした。赴任地で最初に支社長の皆さんに伝えたのがこの言葉でした。現場のことは基本現場に任せる、とのメッセージを込めていました。

マネジャーの最大の役割は、業績を上げること以上に人を育てることだと考えています。人は任されて育つといわれますが、任せ切るのは怖いことで、実際はさまざまの困難を伴います。しかし現場では、若手社員であっても自分の担当範囲では自分で判断し行動しなければなりません。社外の人に会うときは誰もが会社の代表ですから、信頼を繋げられる対応が不可欠です。

重要なポイントは、その決断は独断ではなく、チームの仲間と十分ディスカッションし知恵を集め、しかし最後は自己の責任で決めるということです。任されたからには最終的には自ら決断し行動しなければなりません。この経験が人を強くするのです。失敗することもあるでしょう、だからといっていつも上司の指示に従ってばかりでは成長出来ません。一方リーダーは、頭を下げることが自分の仕事だと考えて任せる覚悟が必要です。「衆知を集めて一人で決める」は強いチームビルディングには不可欠だと考えました。

 

高度成長期までの日本企業では、タテ型の組織のなかでOJT中心に社員教育が行われてきました。しかしスピードと効率が求められる時代になると、組織の形態は次第にフラット化し、OJTが機能しにくい環境になってきました。ピラミッド型組織からなべぶた型への変化です。とはいっても人が育つのは、机上の理論や研修の場ではなく、やはりその社員が置かれている現場なのです。研修を受ければ、目から鱗が落ちたと報告に書くでしょう。しかし実務にかえれば鱗は目に戻ってしまいます(いちど落ちたらかえって汚れているとも)。最も難しいのは、研修で得た知識やスキルを、仕事の場用に翻訳することです。その役割として本来はOJTが活躍するのです。それが機能しなければ、大半の研修成果は結局忘れ去られてしまいます。

マネジャーが育たないという悩みを多く聞きます。その原因は組織がフラット化したために、OJTでの代行経験を積むフィールドが減少したことにあります。効率化とスピードが求められるあまり、自分のまわりを見て衆知を集める余裕がなくなります。すると組織の中で若手社員は孤立します。不幸な事例はここに最大の原因があります。

 

人材が豊富だといわれている会社には、先輩から受け継がれてきた学ぶ現場があり、そこでのOJTが最高の研修だったのです。まさに現場が人を育てるのです。良い仲間や先輩がいて、さらに良いお客様がいて、それらすべての環境を含んでいる現場こそ人を育てる最良のフィールドだと確信しています。

 

少々きれいごとを書きすぎたかもしれません。書店の棚には最新の素晴らしい経営理論が山積みになっています。しかし、現場でそれを動かすひと、動くひとは誰ですか?

[1] 柴田昌治『会社はなぜ変われないのか』日本経済新聞社

2017.02.13-22

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