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コラム 賢人の思考 ~私たちが無意識に行っていること~
2024.06.24
2024.06.24
今回は石川雄一氏に「私たちが無意識に行っていること」について執筆いただきました。
私が大切にしているのが、人に対する尊厳です。その想いを常に持つよう心掛けています。
法然のお話しはとても興味深いですので、ぜひ読んでみていただきたいと思います。
【著者】
石川 雄一 氏
【プロフィール】
慶應義塾大学経済学部卒業後、東京海上火災保険株式会社(現:東京海上日動火災保険㈱)に入社。主に国内営業畑を歩み、近畿業務推進部長、札幌中央支店長などを歴任
55歳で自動車メーカー保険代理店の常務取締役となり、経営と人材開発に尽力
退任後、大型自動車メーカー関連会社参与を経て退職
2017年に立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科入学し、2019年3月に修士課程修了。MBA(経営学修士・社会デザイン学)
現在立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科博士課程に在籍し、企業組織に関する研究の傍ら、セミナー講師など精力的に活動している
テーマ 私たちが無意識に行っていること
知人に神楽坂にある浄土宗寺院の住職がいる。住職の仕事は、お盆などの繁忙期を除くと不定期だ。ことが起こるまで受け身であるから予定が立てにくい。複数日の旅行などには出かけられないのが宿命だ。その彼が4月に京都へ行くという。
浄土宗は、法然上人が1175年に開いた念仏仏教である。「南無阿弥陀仏」と称えれば、すべての者が救われるとする「専修念仏」が特徴だ。そして今年が開宗850年にあたり、4月中旬京都知恩院に全国の僧侶が集結して大法要が営まれ、知人もそれに参加したのだ。たまたま筆者も4月末に京都を訪れることがあり、久しぶりに知恩院に立ち寄った。寺の中心をなす御影堂は巨大な建物で、なんと4000人を収容できるそうだ。御影堂を埋め尽くした僧侶たちを想い、大法要直後の余韻を味わうことができた。
上野の東京国立博物館では特別展「法然と極楽」が、4月16日から6月9日まで開催されていた。筆者は浄土宗ではないのだが、京都からの流れでこれにも出かけた。にわか勉強をしてみると、日本仏教の奥深い流れが少し理解できた。
宗教はどれも様々な教えがあり、場合によっては生活習慣や行動を制限されるケースもある。例えばイスラム教に関しては、筆者の知識ではとても触れることができない。
今回浄土宗の教えを少し学んで、実に驚くべき発見があった。もちろんすでにご存じの方もいるだろうが、それは、法然のノーマライゼーション(1)である。
時は鎌倉時代である。そのころ女性は不浄の者として扱われ、寺へのお参りや、経典を読むことが制限され、仏になることも、極楽に往生することもできないとされていた。さらに女性は、幼いときは父に、嫁しては夫に、老いては子に従わなければならないとされていた。
それに対し法然はこれらを否定し、女性でも平等に救われる「女人往生」を説いたのだ。また、生まれて100日以内の赤ん坊は、汚れているのでお寺にお参りしてはいけないと言われていた。法然はこうした風習を全く問題とせず、差別なくお参りしてもよいと説いた。心より「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えれば、だれでもが平等に成仏することができると。
あなたの宗教は?と問われてすぐに答えられる人は限られているだろう。無宗教の国民だともいわれる。身内の葬儀に直面して初めて自分の家の宗教を確認し、そのルールに沿って営むことになる。今や墓地も無宗教化してきている。
それにもかかわらず、正月には初詣に出かけるし、折に触れて寺社仏閣を訪問し神籤を引いて一喜一憂している人のなんと多いことか。正月に、神田明神から仕事が始まる会社も相当数ある。結婚式は、自分の宗教にかかわらず(多くは女性の希望に寄せて)、チャペルや神社で誓いを立てるのが一般的だ。赤ちゃんが生まれれば、お七夜の祝いがある。「お食い初め」という儀式をご存じだろうか。一般的には、生後100日を機に初めてのごちそうを食べさせる習慣だ。もちろん100日の赤ちゃんは食べられはしないので、形式である。その100日は、仏教からきているのかもしれない。さらに子供たちの七五三はジジババのコストで行われるのも標準的。これらの風習は宗教とはいえないかもしれないが、日本社会に長く伝えられてきた。
人の誕生から終末まで冠婚葬祭においては、宗教にかかわらずその行動を優先できる。会社でも、保育園の呼び出しで早退する場合は肩見狭く、周りもいい顔しないようだが、お通夜なので、といえばすんなりと送り出してくれる。
現代日本人の多くは、宗教にとらわれていないと思っているだろう。しかし、旧くからの言い伝えや風習に自然に従っている。実はこうした習慣が、我々の行動に無意識のうちに影響を与えているのだ。因習と呼ばれることもある。
ジェンダーギャップ指数が世界118位の国である。ここにも、無意識の影響がおよんでいるのかもしれない。日本のジェンダー研究は、海外の影響を受けて広がってきた。法然にジェンダーを学ぶ話は聞いたことがないが、鎌倉時代の日本にこんな発想を広めた人がいたことを、あらためて知ることには意味がある。
(注釈)
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