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コラム 賢人の思考 ~「日本大学アメリカンフットボール部の大麻・薬物事件に思う(その1)」~
2023.08.31
2023.08.31
今話題となっている日本大学アメリカンフットボール部大麻・薬物事件をテーマに、八星篤先生に執筆していただきました。自身が広報部長として第一勧業銀行総会屋事件に対応された経験をもとに、危機発生時にどのように対応すれば良いのか、八星先生の考察を述べていただきます。
○著者プロフィール
つくだ社会科学研究所
代表 八星 篤(はちぼし あつし)氏
1972年 東京大学経済学部卒業
1972年 第一勧業銀行入行
1996年 広報部長
1997年 企画室長
1998年 横浜支店長
2000年 執行役員調査室長 兼 第一勧銀総合研究所専務取締役
2002年 みずほ銀行執行役員調査部長 兼 みずほ総合研究所専務取締役
同年 みずほ銀行退職
2003年 株式会社サカタのタネ監査役(社外)就任
2008年 株式会社サカタのタネ取締役(社外)就任
2013年 株式会社サカタのタネ取締役辞任
現在、危機管理、経済・金融等の講演・研修活動に従事 。なお、八星氏は高杉良著「金融腐食列島」シリーズの登場人物のモデルの一人と言われている(八星氏が第一勧業銀行総会屋事件時の広報部長時代がモデル)。
○テーマ 「日本大学アメリカンフットボール部の大麻・薬物事件に思う(その1)」
私は、現在進行中の事件を取り扱うのは、初めてです(厳密に言えば、旧第一勧業銀行(絵現みずほ銀行)の時の総会屋事件では、広報部長として、事件の渦中にありましたが、まさに自分事であり、客観的に物事を見る余裕はかけらもありませんでした)。このコラムの記述時点(2023年8月24日)までの報道や記者会見、説明、批判等を手掛かりとして私見を述べてみたいと思います。その後、新たな事実が判明して、私の記述が誤りとなることもあると思いますが、ご寛恕ください(旧第一勧業銀行の総会屋事件でも、後に新たな事実が判明したことが多かったので)。
1.事件の経過
大麻・薬物事件のほかに、パワハラ事件も絡んでいるようですが、今回は大麻・薬物事件を中心に経過を見ていきましょう。昨年春以降からアメリカンフットボール部員(以下アメフト)が大麻・薬物に関与しているとの情報が警視庁に寄せられていたようです。残念ながら大麻・違法薬物に関与しているというのは、他の大学でもあるようですが、だから日大でも許されるという話ではありません。皆さんは、この理屈は当然と思われるでしょうが、「他もやっているからという話」が持ち出されると、必ず物事を安易に考えがちになります。
昨年11月にはアメフト部員の保護者からアメフト部の部長に調査して欲しいとの依頼があり、部員1人の自己申告で彼は厳重注意処分となったようです。この時も警察に相談し、警察が部に対して薬物乱用に関する講座を開いたとの報道もありますが、いずれにせよ、これで、一件落着となったようです。しかし、この件がどこまで報告されているのかは不透明です。後に作られた調査報告書には記載があるようですが、個人のプライバシーの問題で非公開とされています。最近は個人情報保護の観点から個人のプライバシーに触れるとして、事件の全容を非公開とすることが多いのですが、この点については一考の余地があると私は思います。一般的に考えると、警察が講習をするに至るまで、全て、部の中で処理してきたというのは考えにくいですし、仮に、それが真実ならば、そのこと自体が組織として非常に大きな問題であると言わざるを得ません。
2.8月8日記者会見
この後も雑誌等での報道は続きましたが、全てを取り挙げることは難しいので、8月3日に警視庁がアメフト部の合宿所を家宅捜索し、8月5日に部員の1人が逮捕された後の8月8日に行われた大学の“記者会見”を中心に内容会見の在り方を検証してみたいと思います。
日本大学は8日、林真理子理事長、酒井健夫学長、澤田康広副学長が記者会見を開き、澤田氏が中心となって経緯・事情説明を行いました。6月末に警察などからアメフト部の寮で大麻使用の噂があると情報提供を受け、「まず大学で徹底的に調査をさせてほしい」と要望したこと。学生の荷物検査をした結果、7月6日に澤田氏自身が、植物砕片が入ったビニール袋を発見したこと。澤田氏は「大麻であると鑑定された小さなビニール袋、いわゆるパケと言われるものですが、その中に入っていたのは非常に微量で、言い方は悪いですけどカスのような感じに見えました」「大麻のカスかもしれないなと思いました」と話し、自ら保管したことを明かにした。この説明については、主に検察出身の弁護士等から厳しい批判がされており、私もこの発言は、種々の批判のとおり、一般的な理屈・常識とは程遠いものだと感じると共に、広報の立場から見れば、この記者会見が“謝罪”として行われているということを全く理解していない典型的なケースと思いました。
さすがに警察は「相談を受けたのは警視庁にいる日大OBの警察官で、相談は個人的関係に伴うものであり『立証は困難』との発言はしておらず、警察署へ相談するよう伝えたと反論し、さらに、警視庁の担当者が『大学の調査にゆだねたい』『犯罪事実が認められた場合、その者について自首させて欲しい』と言ったという発言も否定。日本大学側から「出頭させたい」との意向が伝えられたと説明した。6月30日に情報提供した後に「確実に調査してもらう必要がある」と判断し7月6日は念押しする趣旨で大学の担当者を警視庁本部に呼び出したとしている。この両発言の矛盾点も明確にされる必要があると思います。
林真理子理事長も謝罪の言葉を口にして深く頭を下げたそうですが、部員の薬物疑惑が浮上していた8月2日、報道陣の取材に応じた際に「違法な薬物が見つかったとかいうことは一切ございません」「私も学生を信じたいという気持ちでいっぱいでございます」と強い口調で疑惑を否定していましたが、会見では、報道陣に「違法な薬物は見つかっていない」と言ったことについて「警察から(鑑定)結果の連絡を受けていないとの意図だった」と釈明し「私の発言で混乱を招いた。言葉足らずで唐突だったと反省している」と述べた。しかし、著名な作家である林氏が、言葉を大切にしていないということは、一体どういうことなのかと感じました。また、記者会見も真に謝罪していることを外部に伝えたいという態度は全く見られず、自分も被害者の一人のような口ぶりだったと思いました。林氏は7月11日の日記者会見では「(不祥事の)後始末に明け暮れたが、やりがいを感じていると振り返った。イメージ回復への改革は『今は6合目』と表現し、組織の透明性を高めて日大生がプライドを持てるようにしたい」と意気込んだそうですが、既にこの時点で、事実は、それとは程遠い状況だったことになります。今後も、理事長としての在り方も含め、状況の推移を見ながら、この事件についてはフォローしていきたいと思います。
最後に、本件についてアメフト部全員が「連帯責任」とされることが問題だという意見があり、日本大学は活動停止を解除しました。関東学生連盟はリーグ戦の出場資格を停止していますが。この事件が個人の不祥事であることが明確ならば、連帯責任はやりすぎと思いますが、アメフト部の合宿所で起きた事件であり、連帯責任うんぬんではなく関与した人、あるいは事実をして知っていた人がいるかどうかの調査が完了するまで、アメフト部の活動を停止することはむしろ危機管理として当然の措置と思います。
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