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コラム 賢人の思考 ~ 無意識のバイアスが引き起こすリスクを知る ~
2023.04.17
2023.04.17
キャリアコンサルタントの宗野永枝氏に「アンコンシャス・バイアス」をテーマにコラムを書いていただきました。
「アンコンシャス・バイアス」を知ることで、怒りもコントロールできることが分かりました。
負の感情をどうコントロールするのか?このコラムで学んでいただければと思います。
【執筆者】宗野 永枝 氏
【プロフィール】
キャリアコンサルタント
在留外国人サポート事業「Finding in Chiba」運営
国際協力NGO、国内文具メーカー勤務を経て開業。日本に暮らす在留外国人の方々が、ライフスタイルに合わせた職業に就き、ライフステージにふさわしい住居を持ち、子どもも大人も発達と目的に合う教育の機会を得ることをお手伝いしています。
テーマ:無意識のバイアスが引き起こすリスクを知る
前回は組織のエンゲージメントについてお伝えしました。今回は昨今よく職場でも耳にするようになった日常に見られる「アンコンシャス・バイアス」についてのお話です。
1)「アンコンシャス・バイアス」とは
「アンコンシャス・バイアス」ー直訳すると「無意識の偏見」、具体的には「特定の属性や集団に対する根拠のない決めつけや思い込み」を指し、人間なら誰もが持ち合わせているものです。
さてここで突然ですが以下の状況について考えてみてください。
これはいったいどういう状況でしょうか?
正解は…
「その外科医は母親だった」というものです。外科医といえば男性をイメージした方も多かったのではないでしょうか。(私もそう思いました)
上記はいわゆる「ステレオタイプ」の例ですが、これ以外に職場でよく見られるものとして、ハロー効果(「営業成績のよいAさんはすべてにおいて優秀だ」など、ひとつの特徴が全体の印象に影響する思考)、現状維持バイアス(「特に不満はなく転職は面倒なので今の会社に留まる」など変化を好まない思考)、正常性バイアス(「少子化が危機的と言われるが、うちの会社は大丈夫だろう」など根拠なくリスクを低く見積もる思考)など、様々なバイアスが存在しています。
2)アンコンシャス・バイアスが企業課題となった背景
アンコンシャス・バイアスについての研究は、米国で1980年代に始まったとされています。米国では先進的にダイバーシティ(組織の多様性)が推進されるなか、2000年以降にアンコンシャス・バイアスの研究も加速していきました。
そのなかで、米国では女性リーダーが一定数以上増えない、少数派の人たちの活躍が少ないなどのダイバーシティが広がらない実態に直面し、数々の研究結果から組織に潜むアンコンシャス・バイアスが意思決定に不合理な結果をもたらすことが判明します。
そしてGoogleをはじめとするテック企業が無意識の偏見是正に取り組み始めたのが2010年代。下の図は2018年の米国での調査結果ですが、上級管理職以上は女性がまだまだ少ない傾向にあることが読み取れます。
出典 「アンコンシャス・バイアスー無意識の偏見ーとは何か」パク・スックチャ 2018年
3) アンコンシャス・バイアスがもたらす組織への影響
職場や学校のような非対称な力関係が存在する場では、アンコンシャス・バイアスは「多数派・主流派」(マジョリティ)の集団を優遇し、「少数派・非主流派」(マイノリティ)の人々が不利に扱われます。みなさんも自分の行動を決めつけられたり、他人から意見を押しつけられたと感じる経験があるのではないでしょうか。
たとえば米国企業では白人男性がマジョリティであり、企業の上級管理職では割合の多い順に、白人男性、白人女性、有色人種の男性、有色人種の女性となります。もしこれがバイアスとして組織に定着し、能力評価に影響することがあれば、慣習や制度、管理職の態度により適材適所の人材配置を阻み、心理的安全性が損なわれ、最悪はエンゲージメントの低下やハラスメントに発展するでしょう。
また個人のキャリアを考えるとき、自らのアンコンシャス・バイアスによって選択肢を狭めたり(例:「医者の子は医者になるべきだ」と思い込む)、自分の能力を過小評価したりする(例:「アジア人は欧米人に比べて評価が低いのは仕方がない」とあきらめる)などの弊害が考えられます。
ひとつの経験は軽微なものであったとしても、何度も似たような状況を経験するとその人の能力や選択に大きな影響を及ぼします。もしアンコンシャス・バイアスによる言動で相手を傷つけた場合に「意図していない言葉だった」「無意識の行動だった」からと言って、許されることではないのです。
4)「無意識のバイアス」がもたらすリスクを避けるために
ここまでリスクばかり取り上げましたが、そもそもなぜアンコンシャス・バイアスが存在するのでしょうか。
それはリスクを回避するために備わった脳の機能で、日々受け取る情報の処理スピードを劇的に高めるためのものです。私達は危険を察知すると反射的に自己防衛を試みますが、そこに過去の知識や経験で得たものが無意識のバイアスとして大きく作用しています。
つまり自己防衛心が働いたとき、つまり自分や相手に不快な感情が湧いたときは、たいていアンコンシャス・バイアスが影響していると考えられます。
例えば部下に対して「こんな簡単なことがなぜできないのか?」とイライラしたり、「相手は間違っている。自分の言うことが正しい」など相手を責めるような思考が出てきたら、無意識のバイアスを疑ってみましょう。攻撃的とも言えるような言動は、相手の自己防衛を招き、さらなるバイアスを生み、ネガティブな反応の応酬になりかねません。
長年培った経験からくる思考パターンに気づくことは容易ではありませんが、「何が自分を不快にさせているか」を思考し言語化する習慣ができると、今までのものの見方が少しずつ変化していきます。そうすることによって、意図せず無意識に相手との関係を悪化させるリスクを減らすことができるはずです。
※参考文献・ウェブサイト
「アンコンシャス・バイアスー無意識の偏見ーとは何か」パク・スックチャ
「『アンコンシャス・バイアス』マネジメント」守屋 智敬
「日常生活に埋め込まれたマイクロアグレッション」デラルド・ウィン・スー
Works150号「組織を蝕む無意識のバイアス」リクルートワークス研究所
https://www.works-i.com/works/item/w150_toku1.pdf
一般社団法人 アンコンシャスバイアス研究所
https://www.unconsciousbias-lab.org/
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