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コラム 賢人の思考 ~ エンゲージメントの低さについて、組織とキャリアの視点で考える(前編) ~
2022.09.26
2022.09.26
キャリアコンサルタントの宗野永枝先生にキャリアデザインについて執筆いただきました。
ある転職サイトでも、働くスタッフが仕事をする上でやりがいを感じることの調査で「スキルアップや成長の実感すること」が第一位で、「昇給・昇進」は第6位となっています(※)。スタッフのキャリアパスをどう描くかも経営者やマネジャーの大事な仕事だと思います。その基本的な考え方を分かりやすくまとめられていますので、ぜひご一読ください。
※エン・ジャパン株式会社、2017、「仕事に求めること」について アンケート集計結果
【執筆者】宗野 永枝 氏
【プロフィール】
キャリアコンサルタント
在留外国人サポート事業「Finding in Chiba」運営
国際協力NGO、国内文具メーカー勤務を経て開業。日本に暮らす在留外国人の方々が、ライフスタイルに合わせた職業に就き、ライフステージにふさわしい住居を持ち、子どもも大人も発達と目的に合う教育の機会を得ることをお手伝いしています。
テーマ:エンゲージメントの低さについて、組織とキャリアの視点で考える(前編)
2022年5月に経済産業省から公表された「未来人材ビジョン」(※1)をご覧になった方もいらっしゃると思います。日本の社会システムや企業の人的資本戦略について問題提起がなされ、いっときSNSで話題になりました。今回は、そこで指摘された問題のひとつ「エンゲージメントの低さ(※2)」について、いちキャリアコンサルタントとして、組織と個人(のキャリア)の双方の視点から解決するためのひとつの方法についてお伝えします。
このコラムの読者のかたは「キャリア」という言葉に対してどんなイメージをお持ちでしょうか。
厚生労働省によれば「過去から将来の長期にわたる職務経験やこれに伴う計画的な能力開発の連鎖を指す」と書かれています。(※3)つまりキャリアという概念は、職業の経験とそれにまつわる能力が相互に関係し、過去から未来へ続くものとイメージできます。
また政府は2014年に「キャリア・コンサルタント養成計画」を策定しました。その背景には、人口構造の変化、人材のボーダレス化、技術革新の加速による不確実性があることや、変化に対応できる人材が不足することに対して政府も危機感を抱いているということが推察できます。
事業継続のリスクを考えるとき、人材に関しては「利害関係者」や「資源」として戦略的な側面が考えられます。また、アメリカで人的資本の開示を義務化されたことに続き、日本でも2021年にコーポレートガバナンス・コードに「人的資本の開示」が加えられ、企業の「人的資本への投資」に対する期待が社会的・経済的に高まっていることが伺えます。
一方で、「日本企業の従業員エンゲージメントは、世界全体でみて最低水準にある」という事実が、前述の「未来人材ビジョン」によって伝えられました。この結果はアメリカのギャラップ社が行う調査に基づくものであり、日本の職業人のエンゲージメントは5%と世界平均の20%と比較して大幅に低い数字になっています。
エンゲージメントの低さは、多くの日本人が職場における活力、やりがいなどが低いまま仕事をしていることを意味し、生産性にも大きく影響していることが考えられます。つまり、企業の抱える人的資本にかかる経営課題として、単にマンパワーとしての人材確保だけなく、エンゲージメントの向上というマネジメントの問題も含まれることを表しています。
医療の飛躍的な進歩や長寿化が進んだことから、現代は人生100年時代と言われるようになりました。そして人生が「学生→職業人→引退」の3ステージから成る時代は終わり、今後は「生涯にさまざまなキャリアを経験する」ような「マルチステージ化」していくとも言われています。(※4)言い換えると、長くなった人生においてキャリアもしくは人生の転機が幾度も訪れるということです。
さらに技術革新と脱炭素化の流れから、今までの職業が失われ、新たなスキルを求められる職種が増えることも予想されます。雇用喪失・創出が生まれるなかで、個人も職業人生のなかでスキルや資源を手に入れ、変化を乗り越えるための多様な人生の選択肢を持つことが必要になってくるでしょう。
ここで、エンゲージメントの低さに見る「組織と個人(キャリア)の課題」に向き合う際に、ヒントになるひとつの有益な理論をご紹介します。エドガー・H・シャイン博士による「キャリア・アンカー」という概念です。(※5)「キャリア・アンカー」とは、経験の蓄積によってつくられた自己イメージを指し、合計8つのカテゴリーに分類されています。シャイン博士によれば、それらは船の碇(アンカー)のように、個人のキャリア選択の際の拠り所となり、自分らしいキャリアを考える材料になりうるものです。
なぜこれが組織と個人それぞれ課題に向き合うために有用かというと、キャリア・アンカーは「組織の要求」と「個人の欲求」との調和の結果つくられるものだからです。環境や組織の働きかけによって、キャリア・アンカーは変化するといわれます。まず個人のキャリア・アンカーを見ていくことより、組織における職務のプランニングが可能になり、そのプロセスがエンゲージメント向上につながるというのが私の見解です。
次回は、このキャリア・アンカーの概念を前提に、シャイン博士が開発された手法「職務と役割の戦略的プランニング」についてお伝えします。
(注釈、引用)
※1「未来人材ビジョン」経済産業省 2022年5月
https://www.meti.go.jp/press/2022/05/20220531001/20220531001-1.pdf
※2「エンゲージメント」とは人事領域では「ワークエンゲージメント」の意味で使われ、「仕事に内的報酬を感じながら のめり込んでいる状態」を指します。
※3「キャリアコンサルティング・キャリアコンサルタント」厚生労働省ウェブサイト
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/career_consulting.html
※4 「LIFE SHIFT-100年時代の人生戦略」リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット 2016年10月
※5 「キャリア・アンカー」エドガー・H. シャイン 2003年6月
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