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コラム 賢人の思考 ~今年の経済はどうなるのだろうか~
2021.04.20
2021.04.20
久々にコラムを掲載いたしします。
コラムを書き溜めておりましたが、人生最大の多忙を極めてしまい、掲載するのが今となってしまいました。今後は定期的に掲載してまいりますので、引き続きご一読よろしくお願い申し上げます。
昨年12月に、バンカーであった八星 篤先生に「今年の経済はどうなるのだろうか」というテーマで書いてもらっておりました。既に4月になりましたが、今このコラムを読んでみますと、コロナ禍の現況・米中対立・東京オリンピックなど、全て見通しが的中しております。本当のバンカーの時代を読む視点は凄いと改めて驚かされました。
昨年末に書かれたコラムだと念頭に置いて、みなさまにもご一読いただけますと幸いです。
○著者
つくだ社会科学研究所
https://www.8-star.jp/index.html
代表 八星 篤(はちぼし あつし)氏
1972年 東京大学経済学部卒業
1972年 第一勧業銀行入行
1996年 広報部長
1997年 企画室長
1998年 横浜支店長
2000年 執行役員調査室長 兼 第一勧銀総合研究所専務取締役
2002年 みずほ銀行執行役員調査部長 兼 みずほ総合研究所専務取締役
同年 みずほ銀行退職
2003年 株式会社サカタのタネ監査役(社外)就任
2008年 株式会社サカタのタネ取締役(社外)就任
2013年 株式会社サカタのタネ取締役辞任
現在、危機管理、経済・金融等の講演・研修活動に従事
現在、危機管理、経済・金融等の講演・研修活動に従事 。なお、八星氏は高杉良著「金融腐食列島」シリーズの登場人物のモデルの一人と言われている(八星氏が第一勧業銀行総会屋事件時の広報部長時代がモデル)
テーマ「今年の経済はどうなるのだろうか」
昨年を振り返って
昨年は日本にとって、世界にとって、たいへんな年でした。私も昨年12月に今年の手帳を買った時、昨年の予定を振り返ってみて、改めて昨年の大変さを肌で感じました。一昨年の12月から3月半ばまでは、現役の皆さんほどでは無いですが、それでも忘年会、箱根駅伝応援、新年会、同窓会・同期会などの予定が入っていました。しかし3月以降、様相は一変しました。元々家で仕事をしている私には、定例の医者通い以外の予定は数えるほどしかありません。毎年、夏には夫婦で旅行をすることにしていましたが、それも中止にしました。いうまでもなく新型コロナ肺炎の蔓延のためです。世界的なコロナ感染の拡大は殆どの国で意識されていなかったことで、まさに「想定外」でした。私は緊急事態宣言が発令されていた時期に東京駅の地下街を歩いてみましたが、全ての店舗が閉店していて、いつもは人で溢れかえっているのに、人っ子一人いない、まるでSFの世界にいるような気がしました。
昨年の年末に同じ場所を歩いてみました。確かに人出は、だいぶ回復していましたが、例年の水準には戻っていないと思いました。何よりも外国からの観光客の姿が極めて少ないことは明らかでした。近年、中国・韓国等の外国人観光客(インバウンド)の急増で活況を呈していた観光関連産業・飲食産業は苦境に陥りました。この対策としてGo Toキャンペーンが7月から開始され、感染が収まった9月以降活発に使われ、一時的には観光関連産業や飲食業も勢いを取り戻したかに見えました。しかし、11月下旬以降コロナ感染者が急激に増え始め、Go Toキャンペーンの継続に意欲を見せていた政府も、本来、年末年始という消費が盛り上がる時期にキャンペーンを一時中止せざるを得なくなり、感染者の拡大による医療崩壊の防止と経済再生の両立が如何に難しいかを図らずも示す結果となりました。今回のコロナ禍のように、いつ収束するのか、自分や身の回りにいつ降りかかるか分からない事柄については、特に世論の反応が厳しいことがはっきりしました。これは、今年の秋に予定されている衆議院総選挙に向けて、コロナの感染拡大防止と経済再生のバランスのとり方等の与党の政策判断に大きな影響を与える可能性があることも示しました。トランプ大統領の4年間が端的に示すように、近年、政治が経済に及ぼす影響が拡大していますので、今年度の経済を考える上でも重要な要素になりそうです。
今年の経済について
さて、今年度の経済動向は、いまさら言うまでもなく、コロナの感染状況がどうなるかに掛かっています。これは、日本も世界も同様です。例年通り、政府や各調査機関から来年の経済見通しが発表されていますが、私は、今年度の経済見通しは、今後のコロナの感染がどうなっていくかによって大きくその姿を変える可能性があり、従来の手法をそのまま適用することは出来ないと思います。もちろん昨年末から接種が始まっているワクチンが副作用なく効果を上げることや感染した場合の有効な治療薬が開発されて、感染が収まってくれることを期待していますが、現段階では未知数であり、かつその効果が経済的に表れて来るには一定の時間が掛かると思います。結論から申し上げると、今年度の日本経済は、昨年度より回復することは確かですが、残念ながら、コロナ禍以前の水準を上回るような大幅な回復は見込めないと予測しています。そもそも昨年度の日本経済は、コロナショックの前に既に消費税増税等の影響を受けて景気後退が始まっていました。そこにコロナ禍の影響をまともに受けたので、非常に大きな景気後退となりました。今年度は、昨年度の落ち込みが激しかったことから数字上は経済が回復したように見えるでしょう。しかし、先にも述べたように、今年度の経済は従来の手法で推し量ることはできません。前期比あるいは前年同期比のGDPを始めとした統計数字が上向いたとしても、それだけで、回復が始まったとみることは早計です。もし比較するのであれば、コロナ禍以前の数字との対比で見なければなりません。ワクチン等が効果を挙げることが前提ですが、それでも、本格的な回復が始まるのは来年度(2022年度)になると覚悟しておく必要があると考えます。こう申し上げるといくつかの反論が返ってきますので、それについての私の考え方を申し上げたいと思います。
私の考え・見通し
①IT化やテレワークの推進によって企業の生産性が上がり、それが今年度の経済に良い影響をもたらすのではないか。
→IT化やテレワークの推進による企業の生産性の上昇は、一般的には企業収益の拡大をもたらしますが、その効果が表れ、企業収益が増加するには一定の時間が必要です。従って、中長期的には、効果による収益が設備投資の増加や雇用や賃金の拡大につながる可能性はあります。ただし、短期的な効果は小さいと思われます。さらに、今後も現状のように、先行きの見通しが不透明な期間が続けば、企業が設備投資の増加や雇用や賃金の拡大という行動に動くか疑問です。もし収益が上がったとしても、それは内部留保の積み増しや借入金の返済に充てられると思います。また、雇用の拡大や賃金の上昇についても、むしろごく一部の企業にとどまり、全体としてみれば、経済を押し上げるような効果は乏しいでしょう。
②政治体制の違いはあるが、中国はコロナの影響を乗り越えて、今、経済が急拡大していると聞く。リーマンショック後も中国経済の伸びが世界を支えたように、今回も中国経済の伸びが日本・世界に良い効果を与えるのではないか。
→中国経済が徹底的な感染防止策の実施により、コロナ禍を乗り越え、現在のところ急速な経済回復を見せていることは事実です。既に、コロナ禍以前の水準まで回復しているとみられます。この勢いは2021年も続き7%程度経済が成長すると思われます。それは、ハイテク分野を中心とした設備投資の加速、雇用・所得の改善による個人消費の拡大が見込まれるためですが、基本的には中国国内の需要の増加に対応するものが中心となりそうです。例えば、日本への観光客の激減に見られるように、以前は海外で消費されていたものが、中国国内の消費へ振り替わっています。これは今年度も続くでしょう。そのため、貿易を通じ (中国の輸入の増加、すなわち海外諸国にとっての輸出の増加)ある程度の海外経済へのプラスの影響はあるものの、その効果は限定的とみられます。更に米中対立が極めて先鋭化していることは、世界経済にとっては大きな障害です。トランプ政権による米国の自国第一主義の政策は、バイデン政権によって徐々に修正されていくと思われますが、中国に対しては警戒心が強く、香港情勢の悪化もあって、当面対立の緩和は難しいと思われます。一方の中国も習近平政権の対米強硬路線を緩める動きは見えず、2021年に政策転換が行われる可能性は低いと思われます。マスクの大半は依然として、中国で生産されています。医療従事者、患者双方にとって感染防止のための必需品を見ても、本来グローバルな協調が必要な時期なのですが、現実がそうなっていないことは経済にとっても大きな制約です。
③東京オリ・パラの開催を契機に、日本経済が回復するのではないか
→東京オリ・パラが開催されることは間違いないと私は考えています。現状の世論調査を見ると、東京オリ・パラを中止・延期すべきという意見が大勢を占めています。しかし、政治的にみれば、政府、東京都、IOCいずれも中止あるいは延期という決断をすることは無いと思います(コロナの感染拡大が爆発的になれば別ですが)。それでは、東京オリ・パラが開催されるとその経済的な効果は大きいでしょうか。残念ながら今年度の経済に及ぼす好影響は小さいと考えられます。東京オリ・パラの経費の大部分は競技場施設等の建設などへの支出で、それは既に完了しています。今後の運営経費で最も大きいのはコロナ対策費と思いますが、それは全体の予算から見れば少額にとどまり、経済を回復させる要因にはなりません。仮に、東京オリ・パラへ世界中から観光客が集まり、東京だけでなく、日本各地で、観光関連産業や飲食業が盛況となれば状況は大きく変化するでしょうが、7-8月までに、世界の人達の認識が「コロナはもう大丈夫、日本に行こう」と思ってくれることが必要ですが、現状、可能性は低いとみられます。
今年の経済は全体としては厳しい、我慢の時期が続くと思います。一方で、コロナ禍を経て得られた経験、新たな考え方・手法には貴重なものがあります。これらを活かした企業活動を行っていくことは重要だと考えます。
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