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テーマ ~ 現代版「百姓」のリアル その5 ~

賢人の思考

 

 

私も年に数回、大学や大学院で教鞭をとることがあります。
筆者である金子さんが本業の農業に携わる傍ら、なぜ講師という仕事をやっているのかを読んでいただきたいと思います。みなさんにとっても学びへのヒントにもなるはずです。

 

【筆者】金子 栄治郎 / Kaneko Eijirou

都会である横浜市青葉区に農地2ヘクタールある16代つづく金子農園の後継者。

2004年から家業に入って10年間イチゴ栽培を行い、神奈川県いちご連合会品評会にて2010年いちご連会長賞、2012年神奈川県議会議長賞受賞。現在は農業や農福連携などのコンサルタントとして活躍する傍ら、自社農園でミニトマト「みのりっち」など、様々な野菜や果実の半自動管理や知的障碍者の人たちと一緒に収穫作業を行う農福連携を実践中。

 

テーマ ~ 現代版「百姓」のリアル その5 ~

今回は私が農業とともに職業として行っている講師という仕事について考えてみたいと思います。

 

講師の仕事について

ここからは、講師の仕事についてお話します。私は、勉強嫌いの劣等生でした。イチゴの栽培をはじめるまでは人生の目標が無く、「なんとなく」生きていました。だから、勉強の楽しさが全く分からない状態でした。転機は25歳の時に、イチゴ栽培に挑戦することを決めたことでした。子供の頃から「強制労働」で農作業の手伝いはしていましたが、受け身の状態で取り組んでいたので、農業に関して必要な知識は全く自分の中に積みあがっていませんでした。恥ずかしながら基礎の基礎である「窒素・リン酸・カリ」も知らないような状態からでした。農業資材店の専務の紹介で知り合った、川崎で私より半年早くイチゴ栽培を始めた方のところに研修という形で通わせていただき、イチゴに触れる機会を増やすことができました。彼のところで研修をしている時に、千葉の我孫子で桐の箱にイチゴが30粒入って1万円で販売している人のイチゴを食べる機会がありました。そのイチゴを食べた瞬間、あまりの美味しさに感動し「この人に弟子入りしたい!」と強く思いました。

 

川崎の先輩農家も一緒に研修に行くことになり、週に1回我孫子まで通うことになりました。はじめのうちは、「始発に乗ってくればいいよ」と言ってくれ我孫子への到着がどんなに早くても8時前になってしまうことを認めていただいていたのですが、農繁期になると「8時に駅までお前たちを迎えに行く時間がもったいない」と言われ、しかも「日の出とともに作業するから日の出に合わせて来て」という愛のムチをいただきました。何としてもこの人の技術を習得したいという一心で研修をお願いしていたので師匠が指示するタイムスケジュールで研修を続けました。午前2時に自宅を出発して日の出前には我孫子に到着。そこから翌日の日の出まで仕事をすることもありました。一番びっくりしたのは、師匠が畑の中でいきなり消えたのでどこに行ったかと探したところ、畑の通路で寝ていたことです(笑)。この過酷な研修を1年間続けたことで、メンタルがかなり鍛えられました。

 

師匠はロジックもしっかりしていて、愛読書は『新栽培技術の理論体系(栄養周期学説の技術的展開)』でした。この本は、大井上康が1948年に著した栽培学の基礎理論書です。植物の生理と発育段階を「栄養生長期―交代期―生殖生長期」という周期で捉え、肥料要素(窒素・リン酸・カリ・石灰など)の働きを各段階に対応させる「栄養周期学説」を体系化しており、作物の成長と施肥・栽培操作の関係を科学的に説明し、病害虫予防、成熟促進、気候不良条件克服などを理論的に導く点が特徴です。単なるマニュアルではなく「栽培とは何か」という哲学的問いかけを含み、理論を基盤に技術を設計することの重要性を示した農業技術思想書として位置づけられています。師匠から作業をしながらこの本の内容を問いかけられ、文字通り頭も身体も鍛えられました。

皆さんは、このような「修行」の経験はありますか?

 

年に数回のチャンスを活かすために

私の仕事の中で講師業は、年に数回程度です。収入比率にしても決して高くはありません。では、なぜ講師業を続けるのか? それは、チャンスの幅を広げるためのインプットを強化するためです。逆説的ではありますが、私は自分のために頑張れない人間です。自己理解を深めた結果、わかりました。逆に、他人のためには頑張れます。ということは、「誰かのために」という機会を自分で作らない限り、私は勉強しないということになります。自己理解を深めたからこそ、自分と家族の未来を明るいものにしていくため、自分自身をスキームに嵌めました。

 

これまでの人生の中で、「ピンチとチャンスは同時にやってくる。」という経験が多かったように感じます。備えができていない「チャンス」は、気付かないか逃してしまう確率が高くなります。逆に備えていれば「チャンス」はあなたに莫大な利益をもたらすでしょう。この違いは何でしょうか?

 

答えは、日常の心構えにあります。

もっと言うと、「自分の人生に対する目標や成し遂げたいこと」があるかどうかです。

 

時間は万民に平等です。寿命も必ず訪れて我々はみんな死にます。「人生は一度きり」という言葉がありますが、まさにその通りだと思います。キャリアコンサルタントを取得する過程で、「キャリアライフレインボー」という考え方を学びました。端的に言えば、人の一生は「子ども」という役割から成長するにつれて役割が虹のように色々な役割が色となって重なっていくという考え方です。結婚すれば「夫・妻」という役割が加わり子どもが生まれれば「親」という役割がさらに加わります。「子ども」という役割は、「親」が他界することで終わります。「いま、親の介護とか子どもの世話とかで時間が取れず人生の目標なんて考えられない!」という方も、ゆとりを持てる時間は必ず来ます。そのタイミングがいつ来るかについては、神のみぞ知るところですが、その時が来た時に自分の人生を楽しむためにも苦しいときにこそ今後の望みを考えることが大切なのでは無いかと考えます。

 

また、他者との関わりを大切にすることも講師の仕事を通じて学んでいます。

講師の時は、「先生」と呼ばれます。「先生」とは、学問・技術・芸術などを教える人、または専門的な知識や経験を持ち、他者から尊敬される立場にある人を指す言葉。学校の教員だけでなく、医師、弁護士、政治家、芸術家などにも敬称として用いられます。

「先に生きる」と書くように、人生や知識の道を先に歩む者として、導き手や模範となる意味を含んでいます。日本では、親しみと敬意を込めて使われる社会的称号です。「立場が人を育てる」という言葉からも、「先生」と呼ばれる仕事をするからには「かくあるべき」を体現しなければならないと考えていました。慣れない頃は、「ねばならない」が先行していましたが生徒として接する人にとって何が利益になるのか?を突き詰めて考えることができるようになってからは、伴走型の先生になれているように感じます。

イメージとしては、私の話に付き合わせて相手の時間を殺すのではなく、相手の悩みや課題に対して一緒に向き合うことで相手の時間を活かすことができると考えています。

お金をもらって仕事をしながら、共に成長できる機会を持つことができるというのは素晴らしいと思います。

皆さんはそういった講師や先生との出会いはありますか?

 

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