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コラム 賢人の思考 ~ 近年話題のライフ・ワークバランス 介護離職を考える その6 ~
2024.10.21
2024.10.21
今回も新野緒氏に介護離職問題の大きな要因である「少子高齢化」について執筆いただきました。
またどのように少子高齢化を乗り越え、介護離職問題に対応すべきか政策提言まで論じておられます。
新野 緒 NIINO HAIJME 東都三軒茶屋リハビリテーション病院 医療相談員(社会福祉士)
JALグループ(株)JSS総合危機管理サービスコンサルティング事業本部での勤務を経て、1998年に東京掖済会病院医療ソーシャルワーカーとして福祉業界に飛び込む。東都三軒茶屋リハビリテーション病院 医療相談員。岡崎人事コンサルタント講師、株式会社Leaf音楽療法センター非常勤講師。
明治薬科大学、日本大学経済学部、中央大学、立正大学、職業能力訓練大学校などでの講師実績多数。介護・医療経営専門誌である日総研出版「介護人財」「地域包括ケアを担うケアマネ&相談員」「地域包括ケア時代の通所&施設マネジメント」に連載・寄稿多数。
Web版「介護人財」にて「医療福祉の次世代成長を狙う技術革新20年戦略」を好評20回連載中。
明治薬科大学、日本大学経済学部、中央大学、立正大学、職業能力訓練大学校などでの講師実績多数。介護・医療経営専門誌である日総研出版「介護人財」「地域包括ケアを担うケアマネ&相談員」「地域包括ケア時代の通所&施設マネジメント」に連載・寄稿多数。
Web版「介護人財」にて「医療福祉の次世代成長を狙う技術革新20年戦略」を好評20回連載中。
近年話題のライフ・ワークバランス~介護離職を考える~その6
介護離職問題と切り離せないのは少子・高齢化の深刻化です。介護への労働力供給を減少させ問題を大きくする高齢化についてはすでに取り上げました。もう一つの問題である「少子化の進行」も労働力供給の減少を加速しています。今回はこれを取り上げます。
出生率は人口統計での計算予測より7年も早く急低下してしまい、政府による異次元の緊急対策が発表されて4兆円の特別予算が組まれました。少子化はなぜ止まらないのでしょうか。ネアンデルタール人の絶滅の事例で考えてみましょう。彼らは過酷な氷河期に少子化が長期化して数が減少して、現生人類のホモサピエンスと雑交した際に吸収され消滅してしまいました。氷河期となり動物の生息数が減る中で、狩猟採集のみで生活するためには広大な猟場の中で分散しないと食べ物が得られません。養える人口も少なくなり集団も大きくなりません。遺伝的多様性が失われた25〜30人程度の小さい集団は脆い、18歳以上の生殖能力低下が0,001%でも発生すれば5000年〜1万年で人口が減少し絶滅するとシミュレーション結果が出ています。1)
しかし、ネアンデルタール人では少子化は進みましたが、介護労働力供給の低下が深刻化しませんでした。どうしてでしょうか。それは集団共同生活と介護が分離されていなかったからです。
現代は、核家族化で少集団化するだけでなく、仕事生活と介護や育児が分離され共同での見守りなど介護や育児上の個々の負担を軽減することができない状況となり、ネアンデルタール人とは別な形で危険な状況が生まれています。生活より仕事効率が優先され、最も集団労働力が集まっている日々の職場において介護や育児というものが分離・排除されてしまったのが原因です。商業や科学技術が発達していますから、衣食住に関する効率的サービスは大量に提供され、介護や育児のサービスも多少は商業化されていますが、効率的に金銭的授受が期待できる分野だけです。育児や介護では、どんなことがどれだけ必要になるかは決まっていません。24時間で、突然発生する幼児や認知症患者が必要とする多様な支援をどこでも柔軟に対応しようとすれば、超高額な金銭的負担を払ってサービスを整えるか、採算を度外視ししてもらわなければ実現しません。
人類の子育ては、他の動物と比較すると生活する上で非常に過酷なことも少子化の一因です。夜泣きで昼夜別なく睡眠不足でも叩き起こされ、食事も仕事も中断して抱っこに授乳、糞尿は布団に垂れ流しで臭いや後始末が大変だからです。人類の親戚である猿の子育てはもっと楽です。体毛があるので、赤ちゃんは自分の腕で把握反射によりしがみついてくれます。つまり、子供を抱える必要がないので両腕は日常の仕事や食事をするのに使えます。腕でしがみつけば自動的にお尻は重力で下を向くので糞尿は地面に落ちます。おむつ換えの必要がありません。清潔を保つのにお尻を時々綺麗に拭くだけでOK。胸にしがみつかせていれば、お乳も自分で探して飲みます。ヒト以外の動物の方が圧倒的に育児負担は少ないのです。2)
その1で少子化により一人っ子が多いのは取り上げましたが、これが出生率低下へさらなる拍車をかけます。原因は子供の存在と分離された生活が長期化すると、子育て生活をどう工夫すれば楽にできるかイメージが明確に具体的に持てなくなるためです。一人っ子なので、自分の兄弟が親にどのように育てられてきたのか、子育て体験そのものを見たこともありません。前述のように人の子育ては元々過酷です。人間は大変なことしかイメージできないことをやろうとはしません。一人だけで不安な上に未経験で怖いからです。親自身も子供に伝える必要性を忘れてしまいます。一人だけの子供が大人になったタイミングは、子育てから数十年経っているので日常で子育てを話題にすることもありません。親になった喜びや夫婦で苦労を乗り越え共同して成長する達成感。愛する存在と過ごす幸せな時間が増える充実感なども、親も時間が数十年経過していますので、何か特別なイベントでもないと思い出せず。また子供が独立して一人暮らしでもしていれば、プライベートな気恥ずかしさもあり、わざわざ語ることもなく、伝承されていかないのです。
未婚者の増加や出生数の減少は、このようにして発生しているので、単純に子育支援予算をつけて何億円かけて育児支援施設を充実させても出生率は増加しません。 迫り来るリスクに立ち向かいつつ、これらの問題を根本から解決するには分離されてしまっている仕事と介護や育児を生活の中で再び一体化する必要があります。生活設計としては、ミニマム・シンプル生活でリスクを軽減しつつ自給自足体制を整え、職住を一体化して24時間で介護や子育てを互いに支援し合う体制を創る必要があります。そして、その両方を同時に実現するには、大都市そのものを解体し、日本列島の平地全体に人口を分散して、防災の観点から生活圏を再構成して協働しやすくする必要があるのです。それを少しずつお話していかないと紙面が足りません。その7以降で取り上げていきたいと思います。
注1)日本人類学会 「2011年11月28日(月)[ナショナルジオグラフィック公式日本語サイト] ネアンデルタール人は異種交配で絶滅?
https://anthropology.jp/board/newspaper/2011backnumber/20111128.html
注2)
講談社現代新書 小林武彦 著 「なぜヒトだけが老いるのか」
〜人間以外の生物は老いずに死ぬ。ヒトだけが獲得した「長い老後」には重要な意味があった〜
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