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コラム 賢人の思考 ~ 近年話題のライフ・ワークバランス 介護離職を考える その4 ~
2024.05.26
2024.05.26
新野緒先生に「近年話題のライフ・ワークバランス~介護離職を考える~その4」というテーマでコラムを書いてもらいました。
老後2000万円不足問題がマスコミで大きく報じられていますが、正しい情報を取得することで不安から安心に変えることができます。
介護の正しい情報を新野先生のコラムから知っていただきたいと思います。
新野 緒NIINO HAIJME 介護老人保健施設 うなね杏霞苑 支援相談員
JALグループ(株)JSS総合危機管理サービスコンサルティング事業本部での勤務を経て、1998年に東京掖済会病院医療ソーシャルワーカーとして福祉業界に飛び込む。2003年より介護老人保健施設うなね杏霞苑支援相談員。岡崎人事コンサルタント講師、株式会社Leaf音楽療法センター非常勤講師。
明治薬科大学、日本大学経済学部、中央大学、立正大学、職業能力訓練大学校などでの講師実績多数。介護・医療経営専門誌である日総研出版「介護人財」「地域包括ケアを担うケアマネ&相談員」「地域包括ケア時代の通所&施設マネジメント」に連載・寄稿多数。
Web版「介護人財」にて「医療福祉の次世代成長を狙う技術革新20年戦略」を好評20回連載中。
近年話題のライフ・ワークバランス~介護離職を考える~その4
前回はどんなリスクが今後の20年間で発生してくるかを取り上げました。今回は介護がどんなタイミングで必要となるか「長生きリスク」を検討して行きます。
長生きリスクで有名なのは、2021年頃に話題となった「老後2000万円不足問題」です。しかし内容としては、“旅行や趣味まで含んだ生活費全額を年金のみで賄うと足りない計算である”というような乱暴なものだったので、マスコミを騒がせるだけで終わりました。「2000万円も用意しないといけないの?」と心配する方もいるでしょうが、平均的な年収で厚生年金が積み立ててあれば、食費や水道光熱費といった必需分くらいは年金で充分賄える計算ですので安心してください。ローンは早めに完済し、遊びや趣味については預貯金と相談しながら余裕のある範囲で無理なく対応しましょう。
その1では、介護離職問題を取り上げた時に病院から戻った高齢の親が介護の必要な状況で戻されて唖然とする息子世代の様子をお伝えしました。大半の皆さんは「そうだろうね。」と思われたかもしれません。しかし、待ってください。私は老化もまた自然の摂理だという話も取り上げました。歳をとって介護が必要なのは当たり前なのに、なぜ息子は唖然とするのでしょうか。ここには人生100年時代の「長生きリスク」がかかえる経済的側面とは別な問題が隠れているのです。息子世代の人生設計から、なぜか親の介護問題が抜け落ちてしまう。今回はこのような事態がなぜ発生するのか、その背景を取り上げます。
古来から人生は50年ほどでした。敦盛の舞の一節「人間五十年 下天の内をくらぶれば、夢幻のごとくなり。一度(ひとたび)生を得て滅せぬ者のあるべきか」で有名です。敗戦直後1950年の平均寿命は、男性58.0歳、女性61.5歳ですから戦国時代とさほど変わっていませんでした。その後に平均寿命は大きく伸びて、2020年には男性81.56歳、女性87.71歳の過去最高を記録しています。
国立長寿医療研究センターでは、2021年に他施設共同研究の総合解析結果「長寿コホートの総合的研究(ILSA-J)2007~2017年間」をまとめて「日本の高齢者の若返り」を報告しました(注1)。それによると、すべての年代で体力が向上とくに80代で顕著な向上が見られ、肉体的には平均して10歳ほど過去と比べて若い状態が維持できている「ものすごく大きな改善」を指摘 しています(注2)。
つまり今の高齢者である親世代は“ピンピンコロリ“ではなく、「ピンピンがっくり」。
いつまでも元気なので衰えた姿を見せることもなく、80代も後半になってから突然に介護が必要となるのです。いつまでも元気ですから子供世代は、年齢からくる親の衰えを感じる体験さえもありません。「まだ大丈夫だよね」と人生設計の中で親の介護に配慮する必要性の検討は後回しとなり、準備不足のまま自分も年齢を重ねてしまう人が多くなったのです。
20代に子供が出来て年齢が80代後半となれば、その子供は50代後半~60歳過ぎとなっていて定年を迎えている人も多い計算です。子供世代は晩婚傾向ですので、ことによれば介護問題が発生したタイミングは孫世代の大学の教育費負担が掛かる経済的にもっとも大変な時期である場合も多いと考えられます。
介護離職問題は、このように元気すぎる親に惑わされ精神的にも、人生設計上でも判断を誤った結果引き起こされている面もある問題なのです。
この問題の解決には常識を変える必要があります。「人間はどの様な生物でどのように老いてゆくか」について、最新科学にもとづいて知見を公的な教育に組み込み人生設計に反映できるように備えさせる必要があるのです。
その5では、「生物としての人間がどのように老いてゆくか」その科学的仕組みを交えながら何に配慮しながら人生設計してゆく必要があるか話を進めていきたいと思います。
注1)
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 老化疫学研究部 すこやかな高齢期をめざして~ワンポイントアドバイス No.49 「日本の高齢者の若返り」 2021年6月14日 公開
注2)
「日本老年学会・日本老年医学会学術集会」 2015年6月12~14日
(2015年6月20日発行)P.9 No.4756
高齢者が5~10歳「若返り」-日本老年学会が声明を発表
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