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コラム 賢人の思考 ~ 組織内のキャリアパスについて考える(前編) ~
2023.08.07
2023.08.07
当社も従業員が30名近くになってきました。単なる給与・昇進表しか作っていないため、従業員のキャリアパスを策定し、目標設定とフィードバックを行いたいと考えておりました。
そこで国家資格キャリアコンサルタントである宗野永枝氏にキャリアパスのつくり方についてコラムを書いていただきました。
当社だけのノウハウにするのではなく、このコラムを読んでいただいている方々にも共有したいと思います。
【執筆者】宗野 永枝 氏
【プロフィール】
キャリアコンサルタント
在留外国人サポート事業「Finding in Chiba」運営
国際協力NGO、国内文具メーカー勤務を経て開業。日本に暮らす在留外国人の方々が、ライフスタイルに合わせた職業に就き、ライフステージにふさわしい住居を持ち、子どもも大人も発達と目的に合う教育の機会を得ることをお手伝いしています。
テーマ:組織内のキャリアパスについて考える(前編)
以前のコラム「エンゲージメントについて、組織とキャリアの視点で考える」(2022/10/3)では、従業員のエンゲージメントを高めるためのアプローチとしてエドガー・シャイン博士の「職務と役割の戦略的プランニング」をとりあげました。
今回のテーマ「キャリアパス」はまさにその戦略的プランニングの中核であり、策定の具体的な方法を含めて考察してみます。
1.組織におけるキャリアパスとは
一般的に人事制度におけるキャリアパスとは、ある特定の職務や組織において、昇進・昇格・昇給等のためのロードマップを意味し、段階ごとのスキルやコンピテンシーが示されます。
キャリアパスのおもな目的は、従業員に以下の行動を促すことにあります。
1)現在の自分のポジションを客観的に認識する
2)組織の戦略に結びつくスキルを身に着け、諸段階における能力を最適化する
3)目標やマイルストーンを持ち、着実にステップアップする
キャリアパスを公開する企業は少ないですが、ウェブで公開している企業を見つけましたので、参考までにここにリンクを載せておきます。
CircleCI 社のCompetency Matrix(エンジニア職)
2.なぜ今キャリアパスを考えるか
これまでも多くの企業がキャリアパスを運用していますが、今あらためてキャリアパスを考えるその背景を3つ挙げてみます。
1)コロナ禍を経て、働く環境の変化とともに個人のキャリアイメージも多様化し、組織や制度による細やかな対応が求められるようになったこと
2)人手不足が深刻化する中で、多様な人材の獲得、組織への最適化、組織定着が求められていること
3)上場企業に人的資本の情報開示が課されたことにより、人的資本を活用した組織の成長戦略について社会の関心が高まっていること
そしてこれらの課題に対してキャリアパスがどのような役割を果たすかというと、
1)個人が目指すキャリアの段階への具体的な道筋を示し、自己内省、目標設定がしやすくなり目標に向かう行動を促進する
2)キャリアパスを組織と個人のフィードバックに用いることで、組織と個人の相互関係を分析しやすくなり、人材戦略の有効性・再現性を高める
3)キャリアパスを軸に組織の構成員をプロファイルすることで、人的資源を可視化する
などが考えられます。
特に昨今では管理職への昇進にネガティブな一般社員の増加が目立ち、管理職の「役割」を再定義したり、職位の移行におけるトランジション・マネジメントの重要性が高まっていると言えるでしょう。
3.キャリアパス策定・運用のプロセス
さて、ここでは基礎的なプロセスを提示します。あくまで一例として読んでいただき、イメージをつくってみてください。
1)目的・ゴール・軸を定める
企業のビジョンやミッションに適う人物について議論し、コアになるスキル・コンピテンシーを特定します。さらに実際に活躍しているメンバーを参考にしながら人物像を決めていきます。
2)策定する領域と関係者を定める
策定する(もしくは見直す)キャリアパスを適用する範囲を決めます。(例えば、マネージャー層もしくはメンバー層、総合職もしくは専門職のグループなど)なぜなら範囲を絞ることでかけるリソース(人、時間、資金)を最小化し推進しやすくするためです。
ターゲットの領域を特定後、キャリアパスの上位に適合しそうな社員複数にインタビューし、スキルや経験、コンピテンシーを整理していきます。
3)キャリアパスの枠組みをつくる
縦横の軸に対して等級と組織の要求の項目をそれぞれ書き入れます。例えば、横軸には今あるポジションを基軸にして等級を細分化し、縦軸をスキルやコンピテンシー、組織の期待等を書いていきます。
4)キャリアパスのマスの中身を埋める
インタビュー結果や実際の従業員の情報を集め、経験・スキル・コンピテンシーを洗い出します。その中でふさわしいものはいずれかのマスに入れ、最後に残った空白は、ヌケモレや重複を避けてすべて埋めていきます。
5)キャリアパスを検証・改善する
2)で定めた関係者に検証してもらい、フィードバックでの良い点と改善すべきポイントをもとにマトリクスを微調整していきます。
そして4)と5)を何度か往復し、最終的なキャリアパスのマトリクスを完成させます
いかがでしょうか。まだイメージが湧かないという方もいるかもしれません。さらに具体的な行程は文末に記載する文献および参考ウェブサイトにも書かれていますので、ぜひご覧いただきたいと思います。
最後に
今回は組織の側から論じましたが、キャリアパスは他者が認識できる「外見上のキャリア」を形成するものであり、キャリアアンカー(2022/9/26のコラム参照)のようなキャリアの自己イメージとあわせて個人のキャリア発達に欠かせないものとも言えます。
組織の要求と個人のキャリアの調和のために、ぜひキャリアパスにはスキル・能力だけでなく「役割、期待」を示すことをしていただき、社員の方のキャリア開発に繋げていただきたいと思います。
ゼロから策定し運用するまでのプロセスはある程度の時間と労力を要します。しかし新たなキャリアパスをつくることによって、自社のキャリア開発をイノベーションできると思うとワクワクしませんか?
後編は具体的な事例から、キャリアパスの活用方法を考察したいと思います。
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参考文献·ウェブサイト
「現場で使えるキャリア理論とモデル」ナンシー·アーサー ロベルタ·ノート メアリー·マクマホン 編集
「キャリア·ダイナミクス」エドガー·H·シャイン
「日本のキャリア研究 組織人のキャリア·ダイナミクス」金井壽宏 鈴木竜太
「キャリアパスの見える化①~⑫」人事戦略研究所 岸本 耕平
https://jinji.jp/hrblog_writer/kishimoto/
「【管理職の実態に関するアンケート調査】ポジティブな管理職を育てる鍵とは」
日本能率協会マネジメントセンター
https://www.jmam.co.jp/hrm/column/0095-kanrishokuchousa.html
「なぜ今、キャリアパスが必要なのか」村井真子
https://note.com/masako0101/n/n1cc52f369c0e
「CircleCI がエンジニアのキャリア パスを見直した理由とは」
https://circleci.com/ja/blog/why-we-re-designed-our-engineering-career-paths-at-circleci/
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