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コラム 賢人の思考 ~コロナに罹ってしまいました~
2023.07.03
2023.07.03
八星篤先生に新型コロナウイルスに罹患された際の体験談を書いていただきました。
5月8日に新型コロナウイルスは感染症法上「5類」に移行しましたが、新型コロナウイルス自体が無くなった訳ではありません。当社でもマスクの着用を義務付けるなど、引き続き感染症対策を実施しております。みなさまも油断せず、予防対策を講じていただきたいと思います。 「天災は忘れた頃にやってくる」 地震学者 寺田寅彦
○著者プロフィール
つくだ社会科学研究所
代表 八星 篤(はちぼし あつし)氏
1972年 東京大学経済学部卒業
1972年 第一勧業銀行入行
1996年 広報部長
1997年 企画室長
1998年 横浜支店長
2000年 執行役員調査室長 兼 第一勧銀総合研究所専務取締役
2002年 みずほ銀行執行役員調査部長 兼 みずほ総合研究所専務取締役
同年 みずほ銀行退職
2003年 株式会社サカタのタネ監査役(社外)就任
2008年 株式会社サカタのタネ取締役(社外)就任
2013年 株式会社サカタのタネ取締役辞任
現在、危機管理、経済・金融等の講演・研修活動に従事 。なお、八星氏は高杉良著「金融腐食列島」シリーズの登場人物のモデルの一人と言われている(八星氏が第一勧業銀行総会屋事件時の広報部長時代がモデル)。
○テーマ 「コロナに罹ってしまいました」
2類から5類に移行する直前の4月24日に私はコロナに感染しました。前回の話の中で、コロナについては、なお、解明されていない部分があることや、治療薬の開発が遅れていること等からなお注意が必要であるとしつつも、結論としては「コロナはやっと終息が展望できるようになっています」と申し上げました。しかし、終息が展望できると思ったことは、私の希望的な観測であったと後悔しています。皆様の中にもご自身やご関係の方が感染された方がおられると思いますが、今回は、私の罹患体験を中心に記述させて頂きます。
まず、この病気の大きな特徴が、症状などが年齢を問わず、個人それぞれで、大きく異なるところにあることを思い知らされました。私のラジオ体操仲間の85歳の方は「1日だけ37度5分ぐらいの熱が出たが、翌日には治ってしまった。ただ、PCR検査が陽性だったので、医師からは自宅待機を命じられたが、インフルエンザや普通の風邪の時の方が、症状ははるかにきつかった。もちろん後遺症もなく、自宅待機の間、元気なのに外出できず、やることがなく時間を持て余した」と仰っていました。この他にも軽症、無症状の方も多数おられます。一方、40代後半の方は「発熱、息苦しさなどの症状が重く、呼吸困難によって、酸素ボンベの使用が必要となった。エクモの使用までは至らなかったので、入院はせず、指定のホテルでの療養生活となった。これで家族への感染が避けられるという安心感はあったものの、部屋でただ一人、あてがわれた弁当を食べ、テレビを見る以外何もすることがない、何もする気がしない療養生活は苦痛以外のなにものでもなかった。二度とこんなことは御免だ」と思ったそうです。彼は、味覚障害は免れたようですが、倦怠感、のどの痛み、咳は後遺症としてかなり長く残ったそうです。働き盛りの彼にとっては、療養期間が終わり、重い後遺症が残る中で出勤をするときには、毎朝「今日も休みたい」という気分だったそうです。ただ、もし、体力・気力が回復するまでゆっくり休んでよいということだったら、かえって職場復帰がかなり遅くなったと思うと語っていました。
さて、それでは、私のケースをお話しましょう。コロナ感染には相応に注意して、外出時には必ずマスクを着用する等基本的な留意事項はきちんと守っていました。4月24日は夕方までは、近所に買い物に出かけたり図書館に行ったり、ごく普通に過ごしていました。4月20日には、第6回目のコロナのワクチン接種券が届き、4月28日から予約受付が開始される予定でした「昨年の11月に5回目の接種を受けてから、そろそろ半年がたつので、出来るだけ早く受けた方が良いね」などと奥さんと相談をしていました。ところが夕食の直後、急に咳が出始め、のどが痛くなりました。立っているのがつらく、といって横になっても楽にはなりません。熱が上がってきたのが分かりましたので、計ってみたら38.2度でした。これはコロナに感染したのかもしれないと思いました。救急車を頼もうかとも考えましたが、救急車も依頼が多くて、なかなか来ないという話も聞いていました。そこで、明朝、近所の病院で発熱外来を設置しているところに行くことしました。パソコンで検索するのもつらかったですが、幸いにも、近所の病院の発熱外来が朝8時から予約開始というのをみつけ少しホッとしました。奥さんには、もしかしたらコロナかもしれないので、決して近づかないように言いました。うつらうつらするだけで眠るとは程遠いう状態でしたが、翌朝、受付開始時間の8時に発熱外来に電話しました。既に予約済みの人がいて10時20分からの診療となりました。防護服に身を固めた看護師さんから、症状の聞き取りがあり、その後、抗原検査をやりました。その結果は陰性でした「結果が分かるのは明日になりますが、PCR検査もなさいますか」と問われた時、私は友人の話を思い出しました。彼も抗原検査では陰性だったのですが、PCR検査では陽性となりました。友人からは「そういう人は結構いるらしい。抗原検査で陰性でもPCR検査は受けた方がいいよ」というアドバイスがあったので、是非お願いしますと返事しました。看護師さんからは「PCR検査の結果が陰性の場合は、事務職員から、陽性の場合は医師から連絡します。陽性の場合は当院から直接、中央区保健所に連絡します。その後中央区保健所からあなたに電話がありますので、その指示に従ってください」との説明がありました。薬は、陽性だった場合を想定してか、10日分を処方してもらいましたが、頭痛、咳止め、解熱剤等通常の風邪等の時にもらう一般薬でした。帰宅した後は、呼吸困難こそはありませんでしたが、その他の症状は続きました。特に疲労感・倦怠感の強さには悩まされました。ともかくだるくて、本を読むことが満足にできない。テレビを見ていても、すぐに飽きてしまう。やる気がしないというよりは、やり続けることが出来ないという状況でした。奥さんとの間では、必ずお互いにマスクをすること、2m以上の距離をとること、私が使用したものは捨てるか、アルコール消毒することなどを決めました。25日の夜は日中の検査の緊張と症状の苦しさからの疲れ、薬の作用で、幾分眠ることは出来ました。26日は、ひたすら病院からの電話を待っていましたが、11時頃医師から電話があり「PCR検査の結果は陽性でした。保健所には、こちらから連絡しましたので、もうすぐ保健所から連絡が入ると思います。その指示に従って、療養してください。なお感染日は4/24となります。お大事に」とのことでした。その後、11時半には中央区保健所から電話がありました。主な指示事項は以下の通りです。
①今は呼吸困難がないとのことですので、自宅での療養となります
②感染日が4/24ですので、5/1までは自宅からの外出は控えてください。その後も5日間程度は、必要不可欠なこと以外の外出は控えてください。勤務先にもそのように連絡してください
③今のところ、濃厚接触者はいないとのことですが、ご家族との間での感染が起こらないよう、適切な距離を保つ、マスクを必ず着用する等によって感染を防止してください。もし、ご本人の病状に急激な変化があったり、濃厚接触者に感染の兆候が見られた場合には、至急ご連絡ください
④これから5/1まで毎日、保健所にメールにて、症状の状況について報告してください。なお、動脈血酸素飽和度を計るためのオキシパルスメーターは、今日中に保健所から自宅にお送りします
⑤この他、何か不明な事や心配なことがあれば、コロナについてのセンターを特設していますので、そちらへお電話ください
指示事項はいずれももっともと思いましたし、患者の不安を取り除こうとする態度も良く分かりました。また、オキシパルスメーターもその日のうちに送られてきて、役所とは思えないような親切で機敏な対応には感心しました。
ただ、症状のつらさは想像以上でした。特設センターに「コロナの治療薬が開発され使用されていると、ニュースでやっているが、その治療薬が欲しい」と言うと「あの治療薬は実際には量が非常に少なくて、呼吸困難が激しく、入院治療が必要な方しか使えないのが実情です」とのことでした。こうした関係の報道は正確にしてほしいと思いました。疲労感・倦怠感の強さは今に至るまで続いて、悩まされています。最初の3日間は症状を報告するために、保健所にメールをすることすら、煩わしく感じました。そのうちに発熱、頭痛、のどの痛みは治まってきたのですが、味覚障害、体のあちこちの痛み、体のふらつきが始まりました。特に食べることが楽しみだったのに、味覚障害はその唯一の楽しみを奪いました。センターに聞いたところ「味覚障害等のコロナの後遺症については、こちらではよく分かりません。外出禁止期間が経過したら、専門医で診てもらってください」とのことでした。私は発病後1か月以上経った現在も、味覚障害、体のふらつき、疲労感・倦怠感等の後遺症に悩まされていますが、効果的な治療法はなく、時間が掛かるようです。耳鼻科や内科の専門医も「コロナは特殊な病気だと思います。人によって症状の軽重が非常に大きい。後遺症についてもその原因等の研究やデータの蓄積は殆ど行われていない。後遺症も含めた研究や治療薬の開発が重要だ。5類への移行の理由は、医学的にはよく分からない」との見解でした。
私はコロナについて情報入手がマスコミに偏り、実際に罹った人からの情報が少なかったことについて、自分自身のリスク管理に甘さがあったと反省しています。
現在も、コロナは単に2類から5類への移行があっただけで、決してコロナが終息したということではありません。政府やマスコミは、移行を大きな変化として、発症率や死亡率の低下、経済の活性化等を中心に報道していますが、症状の多様性や後遺症についての説明やデータの提供はほとんど行われていません。これが政府、マスコミの危機対応として適切なやり方であったかどうかは、疑問が残ります。
私のケースを振返り、民間ベースとしての危機管理として考えてみますと、まず「決してコロナは終息したわけでは無く、ウィルスは今も存在していることを、きちんと認識することが必要」と思います。そして、5類への移行とは、言葉を変えれば、コロナへの対応や管理が国中心からから、個人や企業中心に移行した、それだけ民間の自己責任が重くなったということだと思います。コロナは単なる風邪のようなものでは無く、年齢にかかわらず重症化するリスクや後遺症が残るリスクがあり、その治療薬や治療方法が不十分あるいは不明という厄介な病気です。今後も感染しないことが最も重要であり、そのための配慮をすることが民間の危機管理として求められるというのが、最近感染した私からの反省を込めたメッセージです。
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