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コラム

コラム 賢人の思考 ~昨年を振り返り、今年思うこと~

賢人の思考

八星篤氏に今世界で起こっている諸問題について執筆していただきました。

平和に慣れてしまった私たちは「戦争も食料問題も自分には関係ない。」というバイアス(Bias)がかかっているように思えます。自らの仕事でさえ「私の会社は大丈夫。」と思っていないでしょうか。『天災は忘れたころにやってくる』と言われますが、危機も同じ。八星氏のコラムを読むことで、自らが置かれている状況を認識できると思います。みなさまもぜひご一読ください。

 

 

○著者プロフィール

つくだ社会科学研究所

代表 八星 篤(はちぼし あつし)氏

 八星 篤氏

1972年 東京大学経済学部卒業

1972年 第一勧業銀行入行
1996年 広報部長
1997年 企画室長
1998年 横浜支店長
2000年 執行役員調査室長 兼 第一勧銀総合研究所専務取締役
2002年 みずほ銀行執行役員調査部長 兼 みずほ総合研究所専務取締役 
同年 みずほ銀行退職
2003年 株式会社サカタのタネ監査役(社外)就任
2008年 株式会社サカタのタネ取締役(社外)就任
2013年 株式会社サカタのタネ取締役辞任

現在、危機管理、経済・金融等の講演・研修活動に従事 。なお、八星氏は高杉良著「金融腐食列島」シリーズの登場人物のモデルの一人と言われている(八星氏が第一勧業銀行総会屋事件時の広報部長時代がモデル)。

 

○テーマ

「昨年を振り返り、今年思うこと」

 

あっという間に3月になりました。たいへん遅ればせながらですが、新年のご挨拶を申し上げます。旧年中は、私のコラムをお読みいただき有難うございました。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。昨年は4回にわたり「銀行の現場で支店長として経験したこと」を書かせて頂きました。この話は、まだ半ばなのですが、いったんお休みをさせて頂いて、今年最初のコラムとして、昨年を振り返り、現在も話題になっていることに触れてみたいと思います(すべて私の個人的な見解ですが)。様々な問題があり2回程度になると思います。

 

この数年間、医療・健康のみならず全世界の社会・経済に多大な影響を及ぼしたコロナも、やっと下火になりつつあります。コロナに関する規制も徐々に緩和され、5月の連休明けには今の2類からインフルエンザと同様の5類に分類される予定です。ただし、次々と現れる変異株に振り回された経緯もあり、もう大丈夫となるかどうかは分かりません。私は年末年始をゆっくりと過ごしたのち、1月半ばからは、コロナ禍で3年以上会うことのできなかった旧友 (高校・大学・職場)とそれぞれ、久しぶりに会うことになっていました。しかし、4回予定していた会合のうち3回はメンバーがコロナに罹患して中止になりました。コロナに罹った3人のうち2人は軽症でしたが、1人は高熱、のどの痛み等が続き、味覚障害の後遺症が残っています。私も花粉症がひどい時期に味覚障害になった経験がありますが、何を食べても美味しくないというのは、大変つらい思いでした。治療薬が本格的に供給されれば一安心かもしれませんが、個人によってその症状の軽重が大きく異なるコロナに対する警戒をどうするか、例えばマスクの着用などについては、一律にこうするべきということではなく、状況に応じた個々の判断が尊重されるべきだと考えます。いずれにしてもペスト、コレラ、天然痘など歴史的にも人類は様々な伝染病に悩まされ、それが歴史を大きく変える要因ともなりましたが、医療技術が格段に進歩したはずの現代でも、なお、感染症の脅威にさらされること、そしてグローバル化が進めば進むほど、その伝播や影響も世界的な規模になることを思い知らされた3年間でした。

 

コロナはやっと終息が展望できるようになっていますが、泥沼化しているのが、ロシアによるウクライナ侵攻です。侵攻が始まってから1年が経ちました。2014年のクリミア侵攻が比較的短期間に終結し、ミンスク合意によって、ロシアの実効支配が事実上認められました。しかし、2019年ウクライナのゼレンスキ―大統領がクリミア奪還を掲げて、大統領に当選したことに、プーチンは不快感と警戒感を持っていました。プーチンはクリミア侵攻の結末から、今回の侵攻でも短期決戦でウクライナを占領できると思っていたようですが、クリミアとウクライナの民族構成や米欧の警戒感の強さの違い等を十分に把握していなかったと思います。例えば、クリミアはウクライナの中での自治共和国でしたが、ロシア系の住民が過半数を占め、ロシアとの関係も深い状況でした。一方、ウクライナは、ウクライナ人が住民の80%を占め、歴史的にも、旧ソ連時代に大飢饉に襲われ多数の餓死者が出るなど、ロシアへの反発は根強いものがありました。また、NATO加盟国であるポーランドなどと国境を接するウクライナへの侵攻に対する欧米の危機感も大きなものでした。ウクライナ侵攻はロシアにとって意義も大義もなく何の利益もありません。加えて、核兵器の使用の可能性を示唆し、原発等に砲撃を加えるなど、狂気の沙汰と言えます。ロシアのような強国で、プーチンのような独裁者が長期間政権を握ると、とても常識では理解できないような戦争を起こす危険性があることを、目の当たりにしました。

 

ロシア経済は、米欧の制裁によって特にエネルギー部門が痛手を被っており、これは時間を追うごとに効いてくると思います。軍事的にも経済的にもロシアもジリ貧状態です。長引けば、ロシア国内で物資が欠乏し、インフレはひどくなり、ソ連が崩壊していった頃に似た状況になる可能性もあり、最終的には戦費すら賄っていけなくなることもあり得ます。今のところ、当局による取り締まり強化により、プーチンへの反発は大きなうねりにはなっていません。また、そもそもロシア国内の情報統制が厳しいので、ロシア国民もプーチンがこれほど危ない橋を渡っていると認識している人は少なく、むしろ欧米の偽情報ではないかと思っている人たちも多くいると思います。しかしながら、戦死者の増加、物資の不足、物価の上昇等事態の悪化が眼に見えるようになれば、いずれ本当に何かがおかしいと思うかもしれません。プーチンの失脚というのも、決してあり得ない事ではないと思います。

 

他方、ウクライナも、国民の戦意は高いですが、兵器や生活物資等については、米国や欧州の援助によって戦争を戦っていることも事実ですから、ロシアに勝つことまで(クリミアまでを奪還する)は展望できません。戦争がさらに長期化し米欧で厭戦気分が高まってくると、十分な戦いができなくなるわけで、そこの見極めが難しいところです。

 

今、何よりも、懸念されるのはロシアによる核の使用の可能性です。核使用は絶対に避けて欲しいと思います。米国もその点に十分配慮しながら、ウクライナへの兵器援助などの対応をしていますが、最終的に核兵器の使用を決定するのはプーチンですから、予見不可能なところが残ります。さらに、核使用の危機が高まると、偶発的な要因による核使用が起こってしまう可能性も高まります。1962年のキューバ危機は米国の核抑止が機能した例として語られることが多いですが、連絡の不備、機器の不具合によって核兵器使用の直前だったことが判明しており、当時の米国の国防長官だったマクナマラは後年、回顧録の中で「キューバ危機で核戦争を回避できたのは『幸運』によるところが大きかった」と語っています。今回、狂気のプーチンが核使用に至った場合、米国はどのような対応をとるのか、非常に難しいところだと思います。これは米国の核の傘の下で、核戦争を回避できるとしている日本を含めた各国へも大きな衝撃を与えます。従来の核抑止理論は、核保有国すべての指導者が、ある程度合理的な思考をするということを前提として成り立っていますが、この理論にも限界があることになり、日本も核兵器に関する防衛の在り方を抜本的に見直すことを迫られます。今のところは、膠着状態が続き、かなりの長期戦の果てに停戦という可能性が最も高いと考えられますが、この仲介役を誰が果たすのかというのも、現状ではまったく見えてきません。両国にある程度の影響力を持つのは、中国であろうと思いますが、中国の仲介には米国が猛反発する可能性が高いと思います。米国にとっての最大の脅威は中国ですから、中国が大きな役割を果たすことは最も好ましくない状況でしょう (中国の仲介によるサウジアラビアとイランの平和合意についても、米国は相当の不快感を示しています)。

コロナとロシアのウクライナ侵攻は日本の政治・経済・社会にも大きな影響を及ぼしています。経済等の諸問題は、複雑に絡まり合っていますので、次回、お話してみたいと思います。

 

 

最後に、最近、食料価格の急上昇に伴い議論が活発化している食料安全保障について、お話したいと思います。日本で食料安全保障という議論が盛んに行われたのは過去にも数回ありますが、その最大のものは1973年6月に米国ニクソン政権が突然大豆輸出禁止を打ち出したことが発端でした。当時米国は物価上昇が続いており、ニクソン政権は71年8月に米ドルと金との交換停止をするなどドル防衛、雇用促進、インフレ抑止のための経済政策を実施しましたが、石油や農産物などの値上がりを抑えることはできませんでした。その中で大豆価格は、73年夏には前年の3倍以上にまで急騰しました。大豆は世界的には搾油、飼料として使われますが、日本国内では、それ以外にも味噌、醤油、豆腐、納豆など食用として使う大豆がありましたが、この時、日本の大豆の自給率は3%しかなく、しかも、輸入はほとんどがアメリカ産でしたので、禁輸政策は大きな波紋を巻き起こしました。この時の禁輸政策は数か月で終わったのですが、食料の確保が自国の安全保障にとって重要な課題だという議論がなされるようになりました。

 

当時、主食の米は手厚い保護政策で、自給が確保されていましたが、その他は輸入に頼るものが多い状況でした。そうした産品について、安全保障の観点から輸入先を多様化すべきだという議論が高まり、日本が経済・技術援助をすることにより、大豆等の生産をサポートし、その産品を日本が輸入するという「開発輸入」政策が実施されました。例えばブラジルのセラードという半乾燥地域を農地化するというプロジェクトに日本は官民挙げて協力し、大豆を中心にした農業生産拡大を援助しました。その効果もあり、現在では、ブラジルは米国を上回る世界一の大豆生産国となっています。ブラジルの大豆の大半は中国に輸出されており、当初の「日本への開発輸入」という考え方とは異なった状況になっていますが、世界全体で見れば、このプロジェクトが大豆の生産地の多様化に大きく貢献していることは確かです。食料安全保障と言っても国土全体の70%が森林の日本が自国だけで達成できるテーマではありません。日本では、人口減少が問題ですが、世界的にみれば人口は増加し続けています。生存に必要な食料を如何に確保するかは、世界全体の共通課題です。他方、農業生産の拡大は森林伐採等による環境保全への影響、水資源の確保、農薬の使用による安全性・動植物への影響、遺伝子組み換え技術の採用の可否など様々な問題を同時に考えていく必要があります。

 

昨年は、感染症も核抑止も食料も、もはや1国で考える時代ではない、しかしその一方で、国際協調の難しさを認識させられた1年であったと思います。

今年は、こうした問題を始めとして「宇宙船地球号」が抱える国際社会としての重要課題であり、しかし、個別国の利害が異なる課題について、どのように折り合いをつけながら、解決に向けて一歩でも前進できる道を模索しなければならない1年になると思います。

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