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コラム

コラム 賢人の思考 ~銀行の現場で支店長として経験したこと、その2~

賢人の思考

今回も八星 篤 先生に、銀行支店長時代のマネジメント体験をもとにコラムを書いていただきました。どのようにしたら組織の業務改善ができるのかが書かれていますので、皆様の職場においても参考になると思います。貴重な体験記ですので、ぜひご一読ください。

 

 

○著者プロフィール

つくだ社会科学研究所

代表 八星 篤(はちぼし あつし)氏

 八星 篤氏

1972年 東京大学経済学部卒業

1972年 第一勧業銀行入行
1996年 広報部長
1997年 企画室長
1998年 横浜支店長
2000年 執行役員調査室長 兼 第一勧銀総合研究所専務取締役
2002年 みずほ銀行執行役員調査部長 兼 みずほ総合研究所専務取締役 
同年 みずほ銀行退職
2003年 株式会社サカタのタネ監査役(社外)就任
2008年 株式会社サカタのタネ取締役(社外)就任
2013年 株式会社サカタのタネ取締役辞任

現在、危機管理、経済・金融等の講演・研修活動に従事 。なお、八星氏は高杉良著「金融腐食列島」シリーズの登場人物のモデルの一人と言われている(八星氏が第一勧業銀行総会屋事件時の広報部長時代がモデル)。

 

 

○テーマ

「銀行の現場で支店長として経験したこと、その2」

 

前回は、私が主として横浜支店の体験から学んだ支店運営・管理手法についてお話しました。今回も引き続き、支店運営・管理に活用できる手法として私が考えたことをお話したいと思います。

 

その前にお断りしておかなければならないのは、ここでご紹介しているのは、私が横浜支店長だった1998-2000年の時期であり、今は、規制強化等により、やらなければならないとされていることがある一方で、現場の支店長が複数店舗の支店長を兼任し、時間的な余裕がないことや支店長の権限が限定されて、今では出来なくなっていることがあることをご承知いただきたいと思います。さらに、前回、私は「部下を叱る場合には、明らかに法令や規則に違反する行為を除いて、理由・タイミング・場所・相手の性格などを慎重に検討した上で、叱るかどうか、叱るとしてもどのように叱るかを決めるようになりました。」と記述しましたが、「法令や規則に違反する行為」については、即座に叱ったという訳ではありません。無論、横領などの明らかな不正行為はその場で厳しく叱ると共に、経過を本部に報告し、処罰を受けさせることにしていました。ここでの温情は、結局問題を大きくしたり、その後も犯罪を繰り返すなど、本人のためにもならないことが多いからです。しかし、確かに法令や規則に違反する行為ではあるが、それをやった理由などを確認した方が良いと私が判断したことについては、事情等を詳細に私自身が聴取し、もちろん行為自体については叱責しますが、その後の対応をどうするかは実情に応じて決めることにしていました。おそらく、現在では規則が厳格になり、このようなことは許されないでしょうが、私は管理者が部下を叱ることとは、そう簡単に割り切れるものでは無い、つまり「ケースバイケースで対応が異なる非常に高度なテクニックだ」と今でも感じています。

 

さて、前回、私は支店の実情を把握するうえで欠かせない部下とのコミュニケーションを「全員への面談」という形で実現できたというお話をしました。それは、特に支店の事務面を改善していく上で大変役に立ちました。私は、事務面をきちんとしないと、営業面でも大きな支障が出ることを上大岡支店で経験していましたので、まずは事務を固めてと思い、私の時間も出来る限りそちらに振り向けていました。ただ、4カ月ぐらい経つと、地方公共団体及び関連団体、上場企業、中堅・中小企業、個人の富裕層等200を超えるお取引先とのお話も当初のご挨拶から、段々核心に触れるものになってきました。バブル崩壊後小康状態を保っていた経済も、回復がはかばかしくなく、金融機関の破綻等もあり、話の内容もかなり難しいものが増え、支店長自ら経営者や財務・経理のトップと協議をするテーマも多くなってきました。当然の結果として、お客様とお話する時間が大幅に増加し、その一方で、これまでのように支店の皆さんと、じっくりと面談できる時間は少なくなりました。面談自体は続けていたのですが、回数や時間は大幅に減らさざるを得ませんでした。しかし、支店の皆さんの生の声を聴くことは、支店の管理・運営上不可欠でした。

 

そこで、思い付いたのが、“日誌の活用”です。それまでも、日誌の制度はありましたが、営業活動報告の色彩が極めて強く、提出者も基本的には営業担当者に限られていました。私はそれを全面的に改めることとして、営業担当者については、当面従来の報告を継続することにしましたが(営業については、別途、抜本的に様々なことを改める構想を考えていました 。これは後ほどお話します)、預金や為替はもちろん貸付や外国為替業務や総務を含めたすべての事務担当職員に、毎日、日誌を提出することを義務付けました。

 

日誌の内容については「その日あったこと、取引先や営業担当者への注文、上司への意見、日頃この点を改善すべきと思っていることなど、何を書いても良い。日誌は毎日提出すること。皆さんの意見等については、少し遅れるかもしれないけれども、必ず私はコメントを書く」と説明しました。

 

その時の支店職員の反応は、はかばかしいものではありませんでした。支店長の指示ですから、正規職員は反論しませんでしたが、非常勤職員のベテランの方から「事務職には、毎日書くようなことはありません。また、それによって、勤務時間が長くなるのは困ります」という話がありした。これに対しては「勤務時間が長くなることはありませんし、もし、万一そのようなことがあれば、それを日誌に書いてください。書くことが無ければ、今日は特になかったという記述で構いません」と返答しました。そう簡単にこの指示が受け入れられるとは考えていませんでしたが、パート職員の抵抗は予想より長く続きました。

 

毎日「今日も報告することはありません」という日誌があがってきました。これは根競べと思いましたので、私も、毎日コメントを変えながら、日誌にコメントを書き続けました。

 

3週間ほど経ってからだと思いますが、さすがに「何もありません」と書くことに飽きたのか、少しずつ報告がされるようになりました。最初は、面談の時とほぼ同様の内容で、社内の営業職員の横柄さ、取引先や上司への不満が中心でした。日誌は、回覧されて上司もこれを読むのがルールでしたので、上司への不満が堂々と書かれていたことには、ちょっとびっくりしました。もっとも、当時パート職員に対する貢献度評価は、ほんの僅かでしたので、辛辣な批判もあまり躊躇せずに書くことが出来たのだと思います。日誌の話の中には、事実関係や背景等をきちんと確認するしたうえで、慎重な対応が必要なものもありました。

 

ただ、私は、こうした難しい話についても、必ず「教えてくれて有難う」と冒頭に書き、その後で「私自身が調査してみる必要があります。ただし、うやむやにはしません。ご意向に沿えないケースもあるでしょうが、必ず回答します」とコメントしました。

 

ただ、日誌制度を始めてみると、私の考えが甘かったことがすぐにわかりました。元々、面談時間が取れない、日誌になら何となるだろうと思っていたのですが、1日に約80枚の日誌を読んで、それにコメントを書くというのは、想像以上に大変な作業でした。それでも、私が言い出したことですから、いまさら止めるとは言えません。日誌の内容を仕分けして、簡単に答えられるものはコメントを書き、時間が掛かるものはコピーを手元に残して、日誌にはもう少し時間をくださいと書きました。それでも、私自身が営業活動を終えて、店へ戻って、緊急な話(融資でも事務でもトラブルでも)があれば、まずそれを聞き、時間があれば、日頃話をしていない行員さんと立ち話をする。その後、山積みの融資申請書や支店長印を必要とする書類(これが意外に多いのです。何故、支店長印が必要なのか分からないものも多かったのですが)を読み、本部からの通達に目を通し、それから、やおら、日誌を読む作業に取り掛かるのですから、ざっと見るだけでも、夜遅くなってしまいました。

 

おまけに、ふと気が付くと、私が帰らないと、副支店長以下、営業の行員は帰らないのです。副支店長に聞いてみると、やはり支店長より先に帰るのは、何となく抵抗があるし、以前の支店長には「俺より先に変えるとは何事だ」と叱られたこともあるとのことでした。そこで副支店長に、まずはあなたが私より先に帰るのを率先して実行して欲しいし、部下にも帰るよう指導して欲しいとお願いしました。

 

これ以降、日誌を読むのに専念は出来ましたが、それでも、時間が足りません。日誌に書いてある話はうやむやすることは出来ない。でもこのままでは、私がパンクしてしまう、何とかこの事態を解決する方法は無いだろうか考えた末に2つの方法をとることにしました。

 

第1は、私が日誌を読まなければその先には進めないから、その時間を何としても、ひねり出すしかない、平日が難しいなら土日しかないが、日曜日は支店長といえども出勤すれば、法律上休日出勤になってしまうし、個人的にも日曜日ぐらいは休みたい。ということで、原則、土曜日に出勤して日誌を読むようにしました。誰もいないし、誰も訪ねてこない、日誌を読むには最適の環境でした。日誌を読むのに疲れると、支店の周りを散歩したり、一度行きたいと思っていた近所のお店で昼食を取ったりしました。土曜に出勤することで、1週間遅れぐらいで、日誌を熟読し、コメントを書くことが出来ました。業務上の改善提案はもちろん、取引先との間で抱えている問題は知らないことも多かったですし、管理職や営業担当者の日頃の態度にしても、私が気が付かない別の一面を知る手掛かりになりました。この作業の過程で、私だけでは到底解決できない事柄の存在や営業と事務との間のコミュニケーション不足などが浮き彫りになってきました。

 

そこで、第2の方法として、私は、事務改善委員会を作り、営業と事務の間で徹底的に議論してもらうことにしました。開催は、月1回として、時間は原則90分としました。メンバーは管理職と若手を取り混ぜて、多彩な議論が出来るように工夫をしました。パート職員の方には時間的な問題で出席してもらえなかったですが、パート職員の提案・疑問が議題になるように、議題は私が選定し、会議の3日前には委員会のメンバーに連絡して、なるべく事前に調べてもらうようにしました。

 

会議の議長は私がやりましたが、私自身はあまり発言しないで、自由闊達な意見交換が出来るように気を配りました。最初は、皆、戸惑ったところもありましたが、慣れてくると、様々な意見が、それぞれの立場から出てくるようになりました。例えば、事務サイドから見れば、こんな面倒なことをやらなくてはならないのか、簡潔な事務処理になるようになるよう取引先と交渉できないのかという至極当然な疑問が出されました。これに対し営業サイドからは、給与振り込みや財形貯蓄の獲得が主要な営業目標になっていた時期に、取引先に無理やり頼み込んで「このやり方なら、まあやっても良い」とOKを取り付けたもので、先方のシステムもそれに沿って作られており、いまさら、変えて欲しいという交渉はかなり難しいという、これもまた、もっともな反論があったりしました。これが、単なる言い合いに終わらず、そこを少しでも改善するにはどうしたらいいのかと言う具体的な方向へ議論を持っていくのが、私の主要な仕事でした。

 

 

支店運営・管理の改革のために考え出した手法については、事務に限らず営業やコンプライアンス管理等まだご紹介したいことがありますので、引き続き次回お話したいと思います。

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