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コラム 賢人の思考 ~何にでも名前があることの意味~
2022.03.14
2022.03.14
石川雄一先生に「何にでも名前があることの意味」というテーマでコラムを書いていただきました。当社でもコミュニケーションの難しさを日々痛感しています。どうしたらコミュニケーションを円滑に進めることができるのか、社として様々な取り組みを行っておりますが、未だその解決法は見つかっておりません。コミュニケーションの難しさを石川先生もコラムで指摘してくれています。
― 言ったことが伝わったことでなく、伝わったことが言ったこと
どう伝えれば良いのか、私も日々模索しています。
※タケシタが取組むコミュニケーション活動についてはこちら
https://www.r-station.co.jp/trc/
【著者】
石川 雄一氏
【プロフィール】
慶應義塾大学経済学部卒業後、東京海上火災保険株式会社(現:東京海上日動火災保険㈱)に入社。主に国内営業畑を歩み、近畿業務推進部長、札幌中央支店長などを歴任
55歳で自動車メーカー保険代理店の常務取締役となり、経営と人材開発に尽力
退任後、大型自動車メーカー関連会社参与を経て退職
2017年に立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科入学し、2019年3月に修士課程修了。MBA(経営学修士・社会デザイン学)
現在立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科博士課程に在籍し、企業組織に関する研究の傍ら、セミナー講師など精力的に活動している
テーマ:何にでも名前があることの意味
あらゆる物には名前がある。名前が共有されるからコミュニケーションが成立する。だれも「椅子」を指して「犬」とは呼ばない。手でふれると冷たくて、頼りなくてこぼれてしまう物は「water」だと、サリヴァンはヘレン・ケラーの手のひらに書いた。その繰り返しで彼女は身の回りの物を認識していった。英語ではwaterにcoldやhotという形容詞が付くのに対し、日本語では「水、冷水、温水、湯、熱湯」と複数の異なった名前で区別される。言語によって文化が異なるゆえんだろう。
モノだけではなく、コトにも名前があることは気づきにくい。歩く、走る、投げる、跳びあがる、そうした動作に名前があるから、その様子を目に浮かべることができる。とはいえ、どのように走っているかは受け止めた人の想像に任される。マラソンなのか短距離ダッシュかは「走る」だけでは分からない。もう少し複雑な話になると、その意味を受け取る人によってかなりのズレが生じる。コトについた名前を、おのおのが自分の解釈をするのだから、皆が同様の理解をすると考える方が不自然である。コロナ禍の現状や対策を述べるテレビ画面の向こうにいる人の話は、なかなか真意が伝わってこない。「加速させる」「スピード感をもって実施する」など、言葉の意味は分かっても解釈は人それぞれだから、もっと具体的でなければコミュケーションが成り立たない。対話が社会をつくるとか、コミュケーションが組織を動かすとか、当たり前に言われているが本当だろうか。
ベッカーという人が1960年代に「ラベリング」という理論で社会問題を説明した。
「あらゆる社会集団はさまざまな規則をつくり、それをその時々と場合に応じて執行しようとする」そして「社会集団は、これを犯せば逸脱となるような規則をもうけ、それを特定の人びとに適用し、彼らにアウトサイダーのラベルを貼ることによって、逸脱を生みだすのである」
犯罪や非行といった社会規範に反する行為、いわゆる逸脱行為によって逸脱者が生まれるのではなく、周囲がその人に「逸脱だ」とラベルを貼ることで逸脱者になっていくのだ。ウェストサイド・ストーリーがリバイバルしているが、少し前まで「非行少年」と呼ばれる少年が街をうろついていた。しかし彼らは「非行少年」と呼ばれる前から存在したし、周囲に幾分かの迷惑をかける若者は、たぶん大昔からいたに違いない。ラベリングされることで彼らは、社会的に「非行少年」と認知され、それにより自分たちもそのように自覚するようになった。ラベリングが社会的逸脱者をつくった典型である。
身近な問題でも、例えば「ニート」という名前も一時大流行したが、耳にする頻度は低下している。では就労に関する問題は解決したのかといえば、むしろ深刻さが増しているのではないだろうか。世間では名前を付ける競争が盛んだ。流行語大賞にノミネートされれば大いに経済効果が伴う。会社の名前はイメージづくりに貢献する。名前を変えてテレビでイメージコマーシャルをする企業が大変多い。〇〇ガラス、より〇GCのほうが新鮮に聞こえる。N通より・・・、S川より・・・会社の組織風土を変革するには、名前を変えることが早道だと考えるのだろう。
モノやコトに名前があるから、私たちは意味を共有できる。しかしその名前の解釈は、人それぞれの育った環境や経験などによって形成されたものである。だから微妙な差異があるのは当然で、まったく同じ様に意味を共有することは不可能だと考えることが重要だ。誰でも経験があるだろう。同じことを何度言っても理解してもらえない。上司の指示は部下に正しく伝わることのほうが少ない。家族だってそうだ。奥さんのいつもの口癖は「なんべん言ったら分かるの!」。
同じ空間にいて空気や温度を共有していてすら、なかなかコミュニケーションは難しい。ましてリモートでの話し合いは、空間も空気も温度も共有していないから、事実は確認できたとしても参加者の意識の方向性は伝わってこない。コロナ禍で蓄積されたフラストレーションは、組織運営に大きな溝を作っているのではないかと危惧している。
*ハワード・ベッカー『完訳 アウトサイダーズ』1973=2011、現代人文社
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