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コラム 賢人の思考 ~企業不祥事は無くならない!?~
2020.10.26
2020.10.26
石川雄一先生に、最近発生した地方銀行の横領事件から「企業不祥事は無くならない!?」というテーマで執筆いただきました。
私も石川先生の言葉にある「ベーシックな心がこもらないルールは定着しない」に同感です。会社の基本的な考え方、いわゆる理念は従業員が理解しやすい言葉で、しかも何度も伝えていくことが必要だと考えています。従業員に基本的な倫理観が伝わっていないことが不祥事を生むとわたしは考えています。わが社も経営理念を2回作り直しましたが、本当に従業員へ伝わる内容になっているのか、現在も自問自答しております。
みなさんの会社はいかがしょうか?
石川先生のコラムをお読みいただき、自社を振り返る良い機会にしていただけましたら幸いです。
○竹下産業株式会社の経営理念・行動指針はこちらです(下記URL)
社外の人と対話しながら、シンプルで伝わりやすい言葉にしました(現在も満足していませんが・・・)。
https://www.r-station.co.jp/company/management_philosophy/
【著者】
石川 雄一 氏
【プロフィール】
慶應義塾大学経済学部卒業後、東京海上火災保険株式会社(現:東京海上日動火災保険㈱)に入社。主に国内営業畑を歩み、近畿業務推進部長、札幌中央支店長などを歴任
55歳で自動車メーカー保険代理店の常務取締役となり、経営と人材開発に尽力
退任後、大型自動車メーカー関連会社参与を経て退職
2017年に立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科入学し、2019年3月に修士課程修了。MBA(経営学修士・社会デザイン学)
2020年4月からは新たに立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科博士課程に在籍し、企業組織に関する研究の傍ら、セミナー講師など精力的に活動している
テーマ:企業不祥事は無くならない!?
企業不祥事が後を絶たない。これほどコンプライアンス経営がうたわれて久しいのに、なぜ無くならないのだろうか?
コロナのさなか、大変驚いた報道がありました。A銀行の行員(女性 60歳 一般職)が、6月29日(月)勤務時間内に、支店の現金保管庫内から現金500万円を窃盗したとして7月1日に逮捕された、という事件です。銀行の発表によると、他の行員が現金の不足に気づき調査を行った結果、現金保管庫にあるはずの現金が9200万円余り不足していた。彼女は数年間にわたり、札束の中身を一万円札から五千円札にすり替えるなどの手口で、これだけ多額の現金を着服していたというのです。
銀行による7月17日付けA4二枚の「不祥事件について」では、「これまでもコンプライアンスを経営の最重要課題のひとつと位置づけ、内部管理態勢の充実・強化に努めてまいりました。今回の事件を受けて、あらためて現金取扱におけるルールの周知徹底を全行員に対し行いました。・・・内部管理態勢の一層の強化を行い、みなさまの信頼回復に全行あげて取り組んでまいります」とのことです。
この報道を見て私は、こんなクラシカルな手口が今でも可能なことに驚いたと同時に、何か違和感を覚えました。
さて、不祥事とはなにか、という初歩的な問から考えてみましょう。
古い話ですが、サザーランドの研究では『ホワイトカラーの犯罪』とは「社会的経済的上層部による法律違反」のことでした。1938年に行った70社の調査では、ほとんど全ての会社で何らかの犯罪行為が発見されたというのです。しかも「ホワイトカラーの犯罪は組織的犯罪であるが、法律違反は認めても、自分を犯罪者とは考えていない」(サザーランド1945-1955:224)。これは何を意味しているのでしょうか。
今日の不祥事は規模や社会的影響など様々で、マスメディアで報じられない事案は何倍も発生しているはずです。共通点は、大まかにいえば法律やルールに違反していることですが、では法律違反やルール違反はイコール犯罪ですか。
私が経験してきた範囲でも、企業内ルール違反は無数に発生しています。例えば通勤定期を利用した長期間のキセル行為、交際費の私物購入などは社内規定で懲戒処分されました。では交際費を使って社員同士で飲食したり、出張旅費の不正申告はどうでしょう。もっと卑近な例では、会社のボールペンをうちで使用したら、私用電話はどうですか。道交法違反を犯したことのないドライバーは存在しないし、自転車や歩行者は赤信号を無視します。こうした違反は犯罪ではないのですか。
人間はズルをする性癖を生まれながらに持っています。動物として生存するための防衛本能として自分を許すこともあるし、子供は誰でも言い逃れのウソをつきます。親の財布から小銭をくすねたことはありませんか?
しつけや教育によって倫理感や道徳感を身に着けていきますが、その強さや自分への厳しさには個人差があります。世の中には、成人になっても倫理感の甘いひとが一定割合存在しています。万引きなどの軽犯罪や、セクハラや不倫を実行することと、知力・学力に相関はありません。大学教授がスカートの中を撮影するのですから。頭脳と下半身は別人格であることも実証されています。
こうした事実を考えると、組織にはすでに無数の種が蒔かれた温床があるといえます。企業不祥事の根源的な原因は、組織に常在しているのです。これは「性悪説」とは少し違います。ひとはズルをする性癖を生まれながらに持っている。だから魔が差すことや出来心は、誰にでも生じる可能性があるということです。
A銀行の事例も、初めは一万円札の束の1枚を五千円札に交換してみた、誰も気づかない、そこで少しづつ枚数を増やしていった、今回たまたま500万円の不足が発見され、調査したところ累計9200万円にまで膨らんでいたわけです。彼女は同じ支店に約10年勤務し、ベテラン社員として管理監督者や他の行員からも頼られ、信頼される存在だったそうです。もちろん個人による窃盗事件ではあります、許されることではありません。しかし報道を聞いて私は驚き、少しだけ彼女が気の毒になりました。
違和感の正体は、これは一義的に企業の不祥事ではないかということです。出来心から始まった行為を、数年間誰も止められなかった。そのチェック態勢の甘さ、銀行側の管理責任は大きいのではないでしょうか。犯罪者を弁護するつもりはありません、しかしひとの心は弱いのです。組織の温床にはすでに種は蒔かれていると考えるべきです。「性悪説」とは違います。間違いを起こさせない、種が芽を出さない、育たないような教育と管理システムを整えることが経営の責任だと思うのです。
本件ルール以前に重要なことが抜け落ちている気がします。それは「そのお金は大切なお客様からお預かりしたものです」という、基本中の基本です。ベーシックな心がこもらないルールは定着しません。ちなみに銀行からの報告書の差出人は、銀行名だけで責任者のお名前ではありませんでした。
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