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コラム 賢人の思考 ~わたしの新しき生活様式~
2020.06.15
2020.06.15
弊社従業員は、ライフラインを維持するために働きつづけなければならないエッセンシャルワーカーであるため、新型コロナウィルスが拡大の中でも、様々な予防対策を講じながら働いていただいておりました。従業員のみんなには本当に感謝しております。
先般、緊急事態宣言が解除されましたが、引き続き在宅ワークをされる方も多いかと思います。在宅ワークをしてみて気づいたことも多かったのではないでしょうか。
熊倉 百音子 先生に「わたしの新しき生活様式」というテーマで、在宅ワークからの気づきを書いていただきましたので、ご一読ください。
【著者】 熊倉 百音子氏
【プロフィール】
東京生まれ ㈱クオリティ・アンド・バリュー 代表取締役
コミュニケーション・コンサルタント
「自分を知る、人を知る、そしてつながる」“クオリティ・コミュニケーション”のセミナーや講義を数多く行い、企業や専門学校において直接指導にもあたっている。
著書「誰も教えてくれなかった 患者さんの心をつかむ デンタルコミュニケーションメソッド」(医歯薬出版社・共著)
立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科修了
立教大学社会デザイン研究所 研究員 (TEAM DIAGRAM所属)
【記事】
タイトル:わたしの新しき生活様式
先日スーパーのレジで並んでいたら、隣の列から叫び声がした。
「もうちょっと離れてちょうだい!ソーシャル・ディスタンスよ!」
見ると声の主は70代と思しきご婦人、彼女の後ろに並んでいた若い女性をきっと睨んでいた。それほど広くはない店内で、なかなか2メートルの距離はとれない。しかし、若い女性は冷静だった。すぐさま「ごめんなさい」と言って少しだけ後ろに下がり、場は収まった。隣で観ていた私の方がドキドキしていたかもしれない。
「新しい生活様式」は私たちの日常を制限する。ソーシャル・ディスタンスはもちろんのこと、うがいと手洗い、マスク着用、会話は正面を避け、食事も横に並んで黙って食べなさい・・・・
しかし、これらすべてを素直に励行していたら、人間らしい生活は営めないのではないかと思う。感染拡大を避ける行動は大事だが、私たちが人間らしい暮らしを送ることも同じように大事ではなかろうか。厳格な行動指示で縛るよりも、その場に応じた臨機応変な智慧で、感染拡大の抑制と暮らしを両立させる術を私たち自身が探っていくしかない、と個人的には思っている。
自粛要請が出されていた間、確かに不自由な生活が続いたが、それなりに楽しく暮らしていた。オンラインで友人と連絡をとったり、いつもより手の込んだ食事をつくったり、朝のメディテーションをしたり、制限の中でなんとか心地よく暮らす工夫をしていた。そんな中で私なりのオリジナル「新しい生活様式」も生まれた。
それは思いもかけないところに埋まっていた。家から出られない時期、多くの人が家の片づけに勤しんでいたと思う。私もその一人であり、しまい込んでいた荷物の整理に励んだ。いわゆる断捨離だ。その荷物の中に相当な数の陶磁器があった。思い起こせば、いろいろな陶磁器に囲まれて育ったお陰でわたしは器の類が好きだったのだ。20代の頃からお小遣いで買える程度の古い器をチョコチョコと集めていたのだが、この15年くらいは全くと言っていい程、器の世界から離れていた。理由はいろいろあるのだが、要するに仕事をすることで精一杯、心に余裕がなかった。気に入った器を眺めたり、飾ったり、という楽しみをいつしか忘れてしまっていたようだ。
改めて昔の器を引っ張り出してみると、欠けたり、ヒビが入ったものがある。どうやら処理に困り、仕舞ってあったものらしい。ふと、思い立って「金継ぎ」にチャレンジしてみることにした。
「金継ぎ」とは、陶磁器の破損部分を漆と金などで修復する修繕方法のことだ。室町時代の蒔絵の工芸技術、そして不完全さをも受け入れる茶道の精神とが合致してアートとして受け入れられるようになった。現在では、プロの金継ぎ師さんもいて、海外の「WABI-SABI」文化への評価の高まりで、どちらかというと、日本よりも海外で認知されている技術かもしれない。本格的な「金継ぎ」は手間も時間もかかり技術も要する、少し敷居が高いものだが、なんとYOUTUBEをみれば簡易的な方法も公開されていた。接着パテややすり、筆などの道具もホームセンターや100均、Amazonで買える。自粛生活でもこんなに揃うとは有難い、本当に便利な時代だ。
「金継ぎ」には独特の美意識がある。愛着のあるものを大切に使い続ける精神、完璧さを求めすぎない大らかさ、そしてちょっとした傷を欠点ではなく逆に個性としてデザインにしてしまうウィット。この時期の私自身、自分の足元を見つめなおしているときに、「金継ぎ」の世界観はピタリとはまったようだ。
器の傷をやすりで磨く。パテをこねる。息を止めて細い筆で線をひく。作業そのものが純粋に楽しい。「純粋に楽しい」と思えることにここのところご無沙汰だったと思い返す。
仕舞い込んだ荷物の中にこんな豊かな世界が埋まっていたのだ。
ニーチェの言葉、「足元を掘れ、そこに泉あり」のように、大切なものは既に此処に在り、ただ、自分が気づいていないだけなのかもしれない。静かで豊かな心情は、自分の内側に埋まっていて、見つけてもらうことを待っている。
本当に大切なアイディアや内なる声、未来へのビジョン、そして現在のような困難に立ち向かう智慧と勇気は、こうした静かな心の在り様から立ち現れるのだろう。
それが、この自粛期間に生まれた、わたしの「新しき生活様式」である。
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