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コラム 賢人の思考 ~ 我ら「団塊」にあらず ~
2019.06.24
2019.06.24
引き続き、つくだ社会科学研究所 代表 八星 篤(はちぼし あつし)氏に書いていただきました。
私たちの世代は、「団塊ジュニア」とか、「ロストジェネレーション(失われた20年世代)」とか言われ、ヒトの数が多いために厳しい競争社会にさらされ、そしてバブル崩壊で厳しい時代を生きてきました。
今回は、私たちの親の世代である「団塊世代」が心の中に考えていることを、八星先生に率直に述べていただきました。さらに、団塊世代が何を学び、何をなすべきかまで提言していただいております。
団塊世代の思いを、是非ご一読ください。
○著者プロフィール
つくだ社会科学研究所
代表 八星 篤(はちぼし あつし)氏
1972年 東京大学経済学部卒業
1972年 第一勧業銀行入行
1996年 広報部長
1997年 企画室長
1998年 横浜支店長
2000年 執行役員調査室長 兼 第一勧銀総合研究所専務取締役
2002年 みずほ銀行執行役員調査部長 兼 みずほ総合研究所専務取締役
同年 みずほ銀行退職
2003年 株式会社サカタのタネ監査役(社外)就任
2008年 株式会社サカタのタネ取締役(社外)就任
2013年 株式会社サカタのタネ取締役辞任
現在、危機管理、経済・金融等の講演・研修活動に従事 。
八星先生はベストセラーで映画化された、
高杉 良 著 「金融腐食列島 呪縛」の登場人物のモデルの一人とも言われています(八星先生が第一勧業銀行総会屋事件時の広報部長時代がモデル)。
我ら「団塊」にあらず
「団塊の世代」とはこの2月に亡くなられた堺屋太一氏が作った造語である。もう少し幅広く使われることもあるが、一般的には1947年から1949年までの間に生まれた人々を指している。
私もその一人である。この小説の題名を契機に「団塊の世代」という呼び名は、我々の世代の総称として広まり定着した。私はこの表現に強い違和感を覚えたが、少数派だったようだ。同じ世代に属する人ですら「我々団塊の世代は…」と言うことが多い。私の知る限りでは、堺屋氏と同世代の藤本義一氏が自分たちの世代を表す「焼け跡闇市派」と比べて、人間味に欠ける言葉だと批判されていた位である。
私が「団塊の世代」という表現に憤りを覚える理由は以下の3点である。
1.団塊という用語自体が人間の集団を表すものとして不適切であること
堺屋氏自身が述べているが、この用語は地質学で用いられるものである。
団塊とは地質学では「堆積岩中に周囲と分離して不規則に成長した物体で、一般に母岩とは異なる組成の物質が大小様々な円味を持った塊として見られる。周辺よりも硬い自生鉱物の集合体の総称」である。人間の集団ついて、無機質な地質学の用語で表現すること、周囲とは組成が異なる塊であるものを世代の名称とすることは不適切だと思う。どんな集団、世代に属するとしても、人間としてそれぞれが個性を持つ。そこが人間の特性であり、魅力であろう。
2.堺屋氏は前書きの中で「団塊の世代は戦争と飢えの恐怖を知らず、武人の美徳と緊急非常の心得を持たないもの」と断じ、「もの心ついた時から30年間を高度成長期に過ごし、明日は今日より豊かだと信じるようになった」と述べている。これは氏のきわめて感覚的な意見に過ぎないと私は思う。
一例を挙げるが、高度成長期の恩恵は我々以上に彼らの世代が享受している。我々の世代は高度経済成長について、安価な労働力の供給源として貢献している。氏の主張の特徴は、①上から目線で物事を語る、②自分の言い分を正当化するために躊躇することなく対象を(この場合団塊の世代)を貶め、それによって危機感を煽る。
この手法は、実は官僚がしばしば使う手法である。氏は官僚を批判しているが、その論調は官僚体質そのものである。
3.人間は、どんなに努力してみても、自分が生まれる時代を選ぶことはできない。選択不可能な事柄を取り上げて、差別、批判の対象とすることは、あってはならないことである。我々の世代の数が多いのは、私は太平洋戦争が終了したことにあると思う。それは、その前後の3-4年の出生数と比較しても明らかである。また、日本に限らず、戦争が終了した後に出生が急増するのは世界的にも共通の現象である。米国ではベビーブーマーと呼ばれ、時に揶揄することもあるが、日本の「団塊の世代」ほど強烈なバッシングを受けているケースは無い。そして今も、我々の世代のせいで、年金制度や医療制度が崩壊すると言われ、しかし数が多いので、政治もその勢力を恐れて抜本的な政策を打ち出せないでいるとの批判を受けている。
さて、我々の世代はこうした状況から何を学び、何をなすべきか。
「団塊の世代」といういわれなき中傷に対して、我々の手で、きちんとした反論をしなかったことは我々の責任である。この点は冒頭にあげた藤本義一氏も、「団塊の世代」は、自分たちで反論すべきだと仰っていた。いまさら言ってみても大勢は変わらないことは事実だろうが、言うべきことは今からでもきちんと主張すべきだ。それが、今後同じような偏見に満ちた主張がなされることの歯止めにもなりうる。
また、我々も性別、国別、生まれた年代など個人の選択が出来ないことに関して、決して差別的な取り扱いや言動を行ってはならない。我々の世代だからこそ、こうした事柄に敏感でなければならない。
我々が平均的には高度成長経済の恩恵を受けたことやその後の経済・社会制度の在り方に責任があることは確かである。だからこそ今後、年金制度や医療制度についても、後世の世代に十分に配慮した施策、例えば、公的年金や医療・介護保険についても所得に応じた税制あるいは料金制度の見直しなどを我々から提言すべきではないか。
70歳を超えた我々だからこそ言える斬新なアイディアは数々あると思う。
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