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欲しいものは何ですか?
2026.03.02

2026.03.02

石川さんに「欲しいものは何ですか?」というテーマでコラムを書いてもらいました。
人生を自律あるものにするためにはどうしたら良いのかを考えさせられる深い文章です。
定年後も大学院に通って博士号の取得を目指されている石川さんだからこそ書ける内容だと思います。みなさまも良かったらご一読ください。

慶應義塾大学経済学部卒業後、東京海上火災保険株式会社(現:東京海上日動火災保険㈱)に入社。主に国内営業畑を歩み、近畿業務推進部長、札幌中央支店長などを歴任。55歳で自動車メーカー保険代理店の常務取締役となり、経営と人材開発に尽力。退任後、大型自動車メーカー関連会社参与を経て退職。
2017年に立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科入学し、2019年3月に修士課程修了。MBA(経営学修士・社会デザイン学)
現在、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科博士課程に在籍し、企業組織に関する研究の傍ら、セミナー講師など精力的に活動している。
お金を減らさない秘訣は「欲しいものを買い、必要なものは買わない」というアドバイスを紹介した。そこで筆者も、今年何を買ったか考えてみた。それは本当に欲しかったものだろうか。
ワイヤレスイヤホンはめったに使っていない。話題のスピーカーを手に入れたが、なかなか聴く時間が取れない。夏用の白いシューズは何回履いただろうか。
寒くなったから、コートを買おうか。いや何着かあるから今年はやめておこう。めったに着ないコートが掛かっている。
高価なものだと自分だけでは決めかねる。家人の承諾が必要だから諦めるか。欲しいものを買うのは実は難しいことが分かった。必要なものなら説得できる。家人だけでなく、実は自分をも説得できるのである。「欲しい」は自分の欲望である。欲望を実現することにはなぜか抵抗感がある。倫理的、道徳的、経済的、それ以外にも躊躇させる何かがあるようだ。
例えば、ふと街のギャラリーに立ち寄ったとき、とても気に入った絵に遭遇したとする。理由はわからないが惹きつける何かを感じてしまった。欲しいな、と思うがそこそこのお値段である。さすがに衝動買いはできない、思いとどまって立ち去る。しかし、後日気になってまた寄ってみた。迷いの極致に陥った。経済的に買えないわけではない。しかし、無駄遣いかもしれない、家人の理解は得られるだろうか。呆れられるかもしれない。無理だろうか。などなど冷静な頭との押し問答である。
絵画は極端な事例かも知れない。しかしファッションでも、趣味のものでもよいが、なかなか自分の欲望に素直に従うのは困難である。ユニクロが成功した理由は、抵抗感の少ない値付けだからだろう。その結果部屋には無駄なものが転がってしまう。
欲しいものを手に入れるときを振り返ると、最も気持ちが高揚しているのは、買うまでのプロセスにいるときである。買う時にピークが来る。しかし、手に入れたあとに一気にその感情が薄れるという経験があるだろう。後悔しないまでも、そのままほとんど使わないものはないだろうか。
少し話は変わるが、「今一番欲しいものは何ですか?」という質問に、会社員の多くは「休暇」と答えるらしい。物よりも休暇である。ではもし3日間の休暇がもらえたら何をするのか。1日目は終日寝て過ごす。2日目にはおいしいものを食べに行く。3日目、明日から会社かと憂鬱に過ごす。
毎日仕事をしていれば一番欲しいのは休暇である。例えばひと月の休暇ほど輝かしい報酬はないだろう。大学に勤めている先生は、サバティカル休暇という制度で、1年間の休暇がもらえる。研究休暇ということらしい。それを知ったとき、なんと羨ましいことと思った。会社も20年くらい勤めた社員にはサバティカル休暇を与えたらよいのに、と考えた。しかし待てよ、1年後に戻ったら自分の席、仕事はどうなっているか不安が先に立つ、サラリーマンの悲哀である。
だから、定年を待ち望んでいる人は少なくない。自由な時間が広がっているのだ。しかしこれも、そう楽なものではないらしい。佐藤優の『定年後の日本人は世界一の楽園を生きる』という新書が売れているという。買うまでもないから図書館に予約しようとしたら、なんと200人待ちだという。そんなに読みたい人がいるということは、定年後の暮らし方に不安がある人が多いのか。あるいは定年を迎えてどうしようかわからないのか。
休暇が一番欲しいと答えた会社員でも、ほかに欲しいものがあるだろう。しかしそれが何であれ、自分だけで欲求をコントロールするのは難しい。サラリーマンは、決められたことや流れの中で行動することが多く、自律した選択経験が少ない。経験していないことをやるのは易しくない。学んでいないことはできないのだ。
以前このコラムで筆者はこんなことを書いている。「100歳まで生きることが稀ではない時代において、長期化した人生をどのように過ごすのか。夢中で過ごした10代に見ていた夢や、なりたかった自分、あこがれを思い出し、再びそれに取り組む時間はたっぷりあるのだ」。少々綺麗ごとに聞こえるかもしれないが、確かに昔の夢やあこがれに取り組むことができれば幸せだ。時間はあるから、問題は、本当にやりたいことを見つけることと一歩踏み出すことである。
欲望は、経験を磨くことで育つのだと思う。
欲しいものを手に入れて、それを使ったり楽しんだりするには、積極的な気持ちやエネルギーが必要だ。欲しい物が無いとは、楽しむエネルギーが足りないということではないか。
欲しいものを探すには、多くの経験や学びが必要だ。「休暇」などと言わず、どうしても欲しいものを自分の中で育てることは、生活に活力を与えるだろう。だからそれは定年後に限らない、現在の自分にとっても同じである。いまの多くの欲望は、広告宣伝に育てられている。
SNSなどに惑わされることなく、自律した自分の欲望を育てようではないか。

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