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「社会」はどこにあるのだろう
2026.10.05

2026.10.05

当方の先輩でもある石川雄一氏に「「社会」はどこにあるのだろう」というテーマで書いてもらいました。
日本には「あわい」という言葉があります。二つのものがゆるい関係で重なり合うところを「あわい」言います。
家と内と外が重なり合う「縁側」は「あわい」の場所であり、外の人と新しいご縁をつくる場所だったそうです。
あいまいが日本の良い文化だと、石川氏のコラムを読んで改めて感じました。皆さんもぜひ読んでみてください。

慶應義塾大学経済学部卒業後、東京海上火災保険株式会社(現:東京海上日動火災保険㈱)に入社。主に国内営業畑を歩み、近畿業務推進部長、札幌中央支店長などを歴任。
55歳で自動車メーカー保険代理店の常務取締役となり、経営と人材開発に尽力。退任後、大型自動車メーカー関連会社参与を経て退職。
2017年に立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科に入学し、2019年3月に修士課程修了。MBA(経営学修士・社会デザイン学)
現在立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科博士課程に在籍し、企業組織に関する研究の傍ら、セミナー講師など精力的に活動している。
日本語は柔軟性が高く、外国語を上手に変換して日本語にしてしまう。たとえばサラリーマンという英単語は存在しないが、サラリーをもらって仕事をしている人たちを、他の日本語で置き換えると意外に難しい。労働者、勤労者、被雇用者、給与所得者など、どれも包括的な用語にならない。取締役がもらうのは給与ではなく報酬だが、サラリーマン社長などという言葉もある。
サラリーマンになるとは、会社などに就職することで社会人になることだ。家庭の庇護下から離れて、就職して自立することを社会人になるという。日本の勤労者の8割が何らかの組織で働くいわゆるサラリーマンだから、社会人になるとは、サラリーマンになることに等しい。会社組織の一員となり、会社に貢献することにまい進することである。そうすると、社会人とは「会社人」のことなんだろうか。職人とか自営の人は社会人ではないのか。社会人を英語の辞書で調べると、adult(成人)、citizen(市民)という単語になるが、ずいぶんニュアンスが違う気がする。ぴったり同じ意味の英語は無いようだ。
筆者は社会デザイン研究科にいるのだが、「社会デザインって何?」と聞かれることが多く、答えに窮する。「社会について考える」とは、あまりにも漠然としているし、社会学とはどこが違うのだろうか。デザインなのだから、なにか能動的なニュアンスが加わっているようだ。そこで改めて考えてみる、社会とは何だろう、どこにあるのだろう。何気なく使っているが、使い方や使う人によって思い描くものが微妙に違っている。
成長する過程で「社会」が登場するのは就職するときだが、「社会人になる」という場合の社会とは、会社の中の組織だったり、働く仲間などで作られている空間のことだろう。そうすると、それは問われた「社会」とは少し違うようだ。それは、会社の外側にあるような気がする。では社会は二つあるのだろうか。会社内と外側に。
社会について考えるという場合の社会は、どうも会社の外にあるもののようだ。ならばそれは何か、簡単には説明しにくい。実は、社会は無数にあるのだ。簡単に言えば、人が複数集まればそれは社会になる。人の関係性の濃淡はあるものの、ある基準で結ばれた複数の人々は社会を作っている。当然、会社内には社会がある。サラリーマンは外の社会と接することが少ない。あまりにも多くの時間を過ごすものだから、会社が社会のほとんどだと感じてしまう。
社会は会社の外にもある。例えば「社会参加」という時の社会は、会社の外側にある様々な境遇の人々が住まう社会のことであり、会社内には無いものだ。しかし広くとらえれば、家族だって社会の一つだ。学校は社会である。クラスや部活、それぞれに社会がある。卒業生が同窓会に集まる。○○OB会のような集まりは、立派な社会である。そうするとこれは、社会人になると言った時の社会とは違うことがわかる。
広くとらえた社会人とは、英語でいうCitizen・市民のことではないか。例えば、定年退職した年金生活者は社会人であり、かつ市民なのだと思う。日本語の市民とは、自立性と公共性をもって能動的に社会参加する人を指すらしい。少し難しい。海外のニュースを見ていると、積極的に政治活動をする人たちが映される。日本では市民運動というと、何か特別な活動と受け取られてしまう。政治関係は身近なものではない。でも独居老人だって市民として選挙にいく。地域で祭りに参加したり、自治会活動する人はなんと呼べばよいのだろうか。筆者でも冬には、火の用心と言って近所を巡回することがある。それは市民参加ではないのだろうか。
サラリーマン、社会人、こうした何か境界がぼんやりした言葉が、日本社会をゆったりしたものにしているような気がする。クッキリさせるには勇気がいるのかもしれない。

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