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コラム 賢人の思考 ~地域を元気にする! 社会起業家の想い~
2019.08.19
2019.08.19
岩手県金ケ崎町で築130年の古民家(2020年春オープン予定)を活用し、地方活性化の起業をされる岩隈大樹先生にコラムを書いていただきました。
岩隈先生とは親友が開催したMBAホルダーの交流会で出会いました。
イノベーションは、若者、馬鹿者、よそ者が起こすと言われています。
岩隈先生は「よそ者」の立場で古民家を、都会から来るヒトたちとの交流プラットフォームとし、金ヶ崎町の関係人口を増やそうと考えておられます。
社会起業家がどのような思考をしているのか、垣間見ていただきたいと思います。
【著者】
岩隈 大樹 氏
千貫石太郎、金ケ崎町の春を満喫する
【プロフィール】
埼玉県出身
2014年、岩手県金ケ崎町地域おこし協力隊に着任し、文化遺産を活用した地域づくりに取り組む
2017年、立教大学21世紀社会デザイン研究科に入学。金ケ崎町における自身の活動をベースとしながら、子どもを対象とした郷土史学習の研究を行う
2019年5月、歴史文化を活かしたまちづくりプロジェクト「いと・をかし」設立。現在、埼玉と岩手を往復する日々を送る
金ケ崎町の魅力をPRする覆面住民、千貫石太郎(上記写真)の専属マネージャーも務める
【コラム】
平成から令和へ。新時代の幕開けとなった2019年5月、私は税務署に開業届を提出しました。屋号は「いと・をかし」。
歴史文化を活かしたまちづくりプロジェクトです。今回、この場をお借りして、私がプロジェクトに込めた想いと取り組み内容について簡単に紹介します。
縦糸(文化遺産)と横糸(現代)を紡ぐ
日本全国には様々な文化遺産があります。
城や神社仏閣はもちろんのこと、山肌を彩る棚田、古民家を囲む生垣、年中行事で振る舞われる郷土食など、地域の暮らしに根ざした文化遺産の多様さは、近年外国人観光客からも注目され、日本の地域社会が持つ大きな強みといえます。
こうした文化遺産はそのひとつひとつが地域で育まれた暮らしの知恵の結晶です。自然と向き合い、コミュニティを作り、泣き、笑い、失敗を繰り返しながらもよりよい暮らしを求めるなかで得た様々な知恵は、現代、そして未来を生きる私たちに様々なヒントを与えてくれます。
しかし、近年日本の文化遺産を取り巻く環境は厳しさを増しています。その大きな理由のひとつは継承・保全の担い手の高齢化です。郷土芸能の断絶や町並み景観の荒廃、棚田の遊休地化などは全国で深刻な問題となっています。もちろん、自治体により保存措置がとられている文化遺産も少なくありませんが、地域住民、特に若年層や転入者へのPRには大きな課題を抱えているケースが多くみられます。
文化遺産(縦糸)と現代に生きる多様な人々(横糸)を紡ぎ、地域の日常に根ざした持続的な活用・保全を図ることで、先人たちが連綿と積み重ねてきた知恵の結晶を未来へとつなぎたい。そうした想いから立ち上げたプロジェクト、それが「いと・をかし」です。
「をかし」があふれる地域社会の実現
「いと・をかし」の「をかし」には、「美しい」「楽しい」「興味深い」といった意味があります。地域に眠る様々な文化遺産の価値を再発見し、その地域ならではの多彩な美しさ、楽しさ、興味深さを育むことで、地域で暮らす人はもとより、来訪者も含めた多くの人が様々なスタイルで愉しむことができる地域社会を実現したい。そうした願いをプロジェクト名に込めました。
「美しい村などはじめからあったわけではない。そこで美しく暮らそうという村人がいて、美しい村になったのである。」かつて民俗学の大家、柳田國男が随筆「美しい村」でそう記したように、その土地に関わる人々の「をかし」が幾重にも交錯することで、内からにじみ出るような、深みのある魅力が育まれていきます。時間がかかるかもしれません。成果が数字に直結しないかもしれません。それでも根気強く続けていくことが大切だという信念のもと、「いと・をかし」は地域に寄り添い事業を展開してゆきます。混沌とした時代を生き抜くための価値観を、地域社会から発信していくことで、地域社会が新たな時代のフロンティアとなっていく。それこそが私たちにとっての希望であり、「をかし」だからです。
プロジェクトの拠点、岩手県金ケ崎町について
いと・をかしプロジェクトが拠点を置くのは、岩手県内陸部に位置する金ケ崎町。世界遺産平泉と県都盛岡の中間にある、人口1万5千人の小さな町です。西に奥羽山脈の重畳たる峰々、東に北上川の滔々とした流れを望む自然豊かな大地には、太古の昔から人々の営みがあり、町を歩けば先人たちの足跡を伝える数々の歴史・文化遺産に巡り合うことができます。また、米作や酪農、アスパラガス・リンゴ栽培など、多様な食材が新鮮な水と空気の中で育まれています。
金ケ崎に有名な観光施設はありません。繁華街やブランドショップもありません。しかし、いや、だからこそ、日常の暮らしの中に素顔の東北を垣間見ることができます。残雪の山々を水面に映すため池、日々その色を変える稲穂の波、路傍に佇む苔むした石碑、地区ごとに催される数々の伝統行事、地元の人だけが知っている隠れた名店…一度訪れただけではわからない、たくさんの「をかし」を探す楽しみにあふれた町です。
私はこの金ケ崎町に地域おこし協力隊※として3年間赴任し、様々な人と出会い、語り合い、飲み交わすなかで、町が持つ奥深い魅力の虜となりました。そして、もっと多くの人に金ケ崎の魅力を知ってもらいたい。特に、町で生まれた子供や若者にこそ、当たり前にある日常の「をかし」に気づいてほしいと思うようになりました。しかし、人は当たり前にあるものの価値になかなか気づけないものです。私自身も含めた「よそ者」が、金ケ崎の「をかし」に気づき、楽しみ、共有していくことで、地元の人が、地元の素晴らしさに少しずつ気づき、誇りをもって暮らしていくことにつながれば。そうしたビジョンをカタチにするため、私はこの町でいと・をかしプロジェクトを立ち上げたのです。
千貫石太郎氏、郷土の歴史をテーマに子供たちとたわむれる
古民家を地域の交流拠点に
いと・をかしプロジェクトの活動内容は、地域の文化遺産をめぐるガイドツアーの企画や、地元小学校と連携した郷土史学習講座の実施、地域の歴史・文化や隠れた魅力に関する情報発信など多岐にわたります。その中でも、現在実現に向けて重点を置き取り組んでいるのが、古民家を活用した地域交流拠点の創出です。
多くの地方自治体の例に漏れず、金ケ崎町内でも増加する空き家が問題となっており、その中には戦前に建てられた古民家も少なくありません。なかでも、永徳寺地区に建つA家住宅は、築130年を超える農家建築で、茅葺屋根や巨大な梁、広々とした土間など、この地方の伝統的建築様式を色濃く残しています。「地域の活性化に役立てるのであれば」という所有者のご厚意により、譲り受ける運びとなったこの古民家を、多くの人が足を運び、愛着をもって末永く活用してもらえる施設として再生させるための改修作業を、今秋から開始します。
具体的な活用案としては、貸スペースとして地域の集まりやサークルなどに利用してもらうほか、四季の風情を感じる各種イベントの開催や、古民家カフェ・日本酒バーの営業、宿泊認可を取ってのゲストハウスの開業などを検討しています。改修作業は地域内外の様々な方の助けを借りつつ、極力セルフビルドで進める予定で、来春の開業を目指します。
築130年の古民家 町民と都会のヒトたちとの交流プラットフォームになる予定(2020年春オープン)
新時代の生き方と地域社会のポテンシャル
岩手の田舎町で起業するという話をすると、よく「食べていけるの?」という心配をされます。しかし、私はそうした将来の不安を一切抱いていません。むしろ、これからの時代、地方こそその真価を発揮するという確信を持っています。
大量生産、大量消費に支えられた従来の資本主義が行き詰まり、モノ消費からコト消費へと移行しつつある現代日本。今後人々はますます精神的な幸福の追求に重きを置くようになると考えられます。そうした需要に応えるポテンシャルが、日本の地域社会にはあります。それは、水や空気といった自然環境であったり、先人の知恵の結晶である文化遺産であったり、その土地に暮らす人々の趣味や技術であったりします。そして、それらが互いに関わりあうことで、その価値は無限の拡がりを見せる可能性を秘めています。
自然、歴史、ひと、そして自分自身の生きざまがひとつにつながったとき、そこには「をかし」という精神的価値が生まれます。その輪が少しずつ広がることで、日本の地域社会は令和という新時代において、ふたたび輝きを取り戻すことができる。そう信じて、私は岩手・金ケ崎の地で「をかし」を徹底的に追求していきたいと思います。
金ケ崎町永徳寺地区の秋の田園風景 日本の古き良き風景が残る
※都市部の若者を地方へ移住させることを目的として、総務省が2009年より実施している事業。任期は最大3年間で、農林漁業や観光業など、受け入れ自治体により活動内容は多岐にわたる。
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