2019.01.23
対談
竹下産業株式会社 代表取締役 竹下敏史
×
北良株式会社(岩手県北上市) 代表取締役 笠井健さん
笠井健さん
北良株式会社 代表取締役・岩手電力株式会社 代表取締役
筑波大学卒業後外資系IT企業でシステムエンジニアを経験し、その後、父が経営する北良株式会社の後継者として、郷里の岩手県北上市に帰郷。
北良株式会社は家庭用・産業用・医療用のガス会社で、東日本大震災では当日から対応を開始し、在宅患者や基幹病院へ医療用ガスを届けることができた。
この経験から、さらに医療と防災に力をいれた会社づくりを進めており、それらの取組みは、2018年3月に中小企業庁が発行した「中小企業BCP支援ガイドブック」でも良き経営事例として紹介されている。
2017年に新たに設立した岩手電力株式会社も、電気料金の一部を地域の社会貢献活動(顧客が選べる6つの社会貢献プラン)につなげるユニークな電力会社として全国から注目されている。
笠井社長は私と同世代、そして創業者から3代目の経営者というところも同じです。そんなところに、勝手に親近感を抱いています。
私は地元を離れずに親の仕事をそのまま継ぎましたが、笠井さんは「外」の空気を吸っていらっしゃるのですね。
大学から地元を離れて、外資系IT企業でSEをやって、そのあと戻ってきました。
中小企業では、代替わりの時がひとつのポイントだと思うのですが。特に笠井さんの場合は、途中から戻ってこられたわけですし。
先代社長と苦楽をともにした古参社員と新社長がぶつかるとか、先代が「オマエには渡さない」と頑固になるとか、「中小企業あるある」ですよね(笑)
うちの場合は幸運なことにそれがなくて、親父の代からの幹部社員たちも残ってくれています。
何か秘訣のようなものがあったんでしょうか?
いや、親父が社長の座に執着しなかったんです。会社印も、代替わりするかなり前から私が預かっていました。私の力ではなくて、本当に幸運なんです。仕事がしやすい環境、関係性を残してもらえました。
すばらしい方なんですね。
お客様に好かれていました。経営者として大切なことはいろいろありますが、お客様に支持される、相談されるということはとても大切なことですね。
事業の代替わりは、親のほう、つまりその時の経営者次第なんですね。やっぱり経営者は勉強しないと。
そうですが、私は「経営者が勉強すれば会社が変わる」とは思っていないんです。経営者が勉強するのはもちろんいいけど、組織も勉強しないと会社はよくなりませんよ。
私の会社でも、いま社員との対話による研修を積み重ねているところです。
対話は大切ですよね。でも、コミュニケーションにおいて、言葉は2~3割くらいの役割しか果たさないそうです。
残りの7割の「非言語」の時間をどのようにつくるかが重要だと思うんです。
非言語、と言いますと?
たとえば私がどこかに見学に行くとします。そのときに誰かを連れていくんです。一緒に体感して、その社員の口から社内で出張報告をしてもらう。大変だけど、これが一番効果的です。
社長の話を社員は信用しません。同僚が同じ話をしたときに初めて信じてくれる。それが普通の社員です。社長ばかり話しているのは良くないですね。
みんなシーンとしてね(笑)。
社内研修をいくらやっても、一方的なインプットだけでは何も変わらない。人間は基本的には「教えたがり」ですから、アウトプットするときに伸びるんです。
うちでは、社員が講師になって勉強会をやったり、そういう場を自分たちで用意するようになってきました。
ところで北良さんでも、見学を多く受け入れていらっしゃいますよね。
そうですね。見に行ったり、こちらに来られたり。
見られるって大事ですよね
社員もいいカッコしたいですよね(笑) ただ、見学慣れして「見せるため」の動きになっちゃいけないので、見学者用の何かを特別に準備することなく、ありのままの現場を見て頂くようにしています。
それと、社員には予定を開示して、いつ誰が何の目的で見学にいらっしゃるのか、しっかり説明しています。
そういえば今日、玄関に私たちの名前入りウェルカムボードがあって感激しましたよ。
見学の極意って何でしょう?
そうですね、自分たちと異なる業種、地域など違うものを見ることだと思います。異業種から学ぶことが大切。
だって、本当に怖いのは同業者ではないですから。
同業者ではない?
業界が同じ会社はどうしても、その業界の常識にとらわれて、そんなのは無理だとか、従来のやり方が正しいとか、お客様の側ではなく生産者側の発想を変えられないことが多いです。
例えば、業界1位が、2位や3位の企業に滅ぼされることってないでしょう?
怖いのは、ルールというか、発想の違う異業種からの参入です。異性でも、一番好きな人にふられたからって、2番目の人が1番に繰り上がるわけじゃないでしょ。
たしかに!そうかもしれません(笑)。
大学時代、図書館に業界の新聞がやたらたくさん揃っていたんです。様々な異なる業界の業界紙を読めば、それぞれの業界の関心事や、時代の変化とどのくらい時間差があるのかなどがわかります。
違う業界から学ぶことは本当に大きいんです。たとえば、いま中国の結婚式では、ゴンドラでカップルがドーンと下りてくる演出が流行っているそうです。
それ、昔は日本でもありましたよね。
それが今中国で受けている。それにはやはり理由があるんです。時間や地域、言語の差がアービトラージ(裁定取引:同じ商品に生じた価値・価格差を活用して利益を得る取引のやり方のこと)になる。そこを考えるのが面白い。
私、「コンサル癖」がありましてね。地元のスーパーに行くとPOPや売り場が気になるんですよ。お客様の声のポストに「鮮魚コーナーが死んでいる。こういう理由から、こう見せた方が良い。」とか書いて入れて、数日たって行ってみて「よしよし、反映されてるな」と。
経営者ですね(笑)。
今日事務所にお邪魔して、社員のみなさんが生き生きとされているのに感心しました。社員のマネジメントで気をつけていらっしゃるのはどんなところですか?
社員のマネジメントよりも上司のマネジメントが重要ですね。部下にあった上司を配置するようにしています。
普通は上司がいてその下に誰をつけるか考えますよね。反対ですね。
社員がつぶれるのは上司のせい。そのダメな上司をつくっているのは誰か? 社長なんです。
うーん、そうか……。
社員ひとりひとりには個性があって、考え方や志向は全て違う。違う人が集まって一緒に仕事をするわけだから、その「差」があることを前提にチームを作らないとダメです。
社員ひとりひとりを理解するのは大変だと思いますが、やはりコミュニケーションですね。
コミュニケーションは結局力技です。
質ではなくて量。それと、その人に合った伝え方があります。そこを間違えると、せっかくのいい言葉も逆効果になりますよね。
エマジェネティックスという脳のタイプを診断するツールがあります。4つの型があって、それぞれの割合が色分けして表示されるんですが、私の場合は、考えてアイディアを出すことが得意なコンセプト型の黄色が強い。
笠井さんはアイディアマンですから。
その分、順番や期限を守るのが苦手で(笑) なので、自分に足りない緑の構造型タイプにフォローしてもらっています。
これは社員の「取説」みたいなもので、社内の壁に社長も含め全員の分を貼りだしてあります。
えっ? 全員分? 誰でも見られるんですか?
はい。そうすれば誰かに何かを伝えるときに、「彼はこのタイプだから、こういう順序で話そう」と考えることができます。
自分と合わないなと思う社員がいたら、「その人とぶつかる前に見るようにして下さい」とも言っています。
なるほど、相手を知ればコミュニケーションも円滑にいきますね。
オフィスの情報媒体処理は、
タケシタにお任せください
03-3887-1761
営業時間/9:00~17:00
東京都(保管積替含む) 千葉県 神奈川県 埼玉県 茨城県 栃木県 群馬県 山梨県 長野県 静岡県 愛知県 大阪府
東京都 千葉県 神奈川県 埼玉県 茨城県 栃木県 群馬県 山梨県 長野県
※「T-CUBE」は竹下産業株式会社の商標登録です