
-
マネジメントのすゝめ 「戦略の失敗は戦術で補うことはできない」
2026.10.13

2026.10.13

大森英直氏に「戦略の失敗は戦術で補うことはできない」というテーマでご執筆いただきました。
戦略の重要性について改めて考える機会となれば幸いです。

前回の「戦略以上に大切なもの」というテーマに続き、今回は戦略についてより詳しく解説していきたいと思います。
~ 目次
戦略の失敗は戦術で補うことはできない
組織は戦略に従う
近代戦略の父と呼ばれるカール・フォン・クラウゼヴィッツは、著書「戦争論」の冒頭で「戦略の失敗は戦術で補うことはできない」と述べています。そこで、まずは戦略と戦術の定義を見ていきましょう。
<マーケティングコンサルタント鈴木博毅(2024)の戦略と戦術の定義>(※1)
戦略 : いかに「目標達成につながる勝利」を選ぶかを考えること
戦術 : 戦略を実現する方法
鈴木氏は、大東亜戦争での日本軍の敗因について「米軍は「目標達成につながる勝利」が多く、日本軍は「目標達成につながる」勝利が少なかった」こと、「日本軍が駐留した25の島のうち、米軍が上陸占領したのはわずか8島にすぎなかった。(中略)日本軍の努力の70%もが、「目標達成につながらない勝利」に費やされた」ことの2点をあげ(※2)、日本軍は戦術面で数多の勝利を収めていたにもかかわらず、それが目標達成につながらなかったと述べています。
前述のカール・フォン・クラウゼヴィッツが著書「戦争論」で「戦略の失敗は戦術で補うことはできない」と記している通り、目標実現のためには「目標達成につながる勝利」をいかに選ぶかが重要となります。鈴木氏はそれについて「勝利につながる「指標」をいかに選ぶかが戦略である」と述べています。
筆者はかつて、株式会社うさぎ薬局の介護事業部(職員数160名)の責任者として事業再建に携わった経験があります。そこでは、事業戦略の指標として「職員の定着率」を掲げ、マネジャーがスタッフマネジメントに注力するようにしました。その結果、経験曲線効果(※3)の理論通り、職員定着による生産性向上・コスト削減に成功し、短期間で収益改善を実現することができました。
(株式会社うさぎ薬局介護事業部 2025年度事業戦略ポスター)

経営学者のアルフレッド・チャンドラーは「組織は戦略に従う」と述べており、経営戦略についても次のような定義をしています。
<チャンドラーの経営戦略の定義>
目標を定め、コースを選択して、資源を配分すること
企業は長期的な目標を定め、その目標達成のための最短ルートの選択と、限られた経営資源(人・物・金・情報)をどう配分するかを考えなければなりません。
大東亜戦争時、米軍が太平洋のわずか8島を占領した後、最短ルートで日本本土上陸を決行したのは、日露戦争の大勝を忘れられず「一大決戦で一点突破しよう」とする日本軍とは対照的に、「日本軍の空母・輸送船の撃沈に集中し、無意味な戦闘を回避する」(※4)という事前に練られた戦略があったからです。ここに双方の戦略に対する重要性の認識に大きな隔たりを感じます。
経営戦略は下図の通り「企業戦略(全社戦略)」「事業戦略(競争戦略)」「機能戦略」の3つの階層(レベル)に分かれます。
事前戦略もなく漫然と競合他社と同じ戦略をとるような場当たり的な経営では、いずれ事業失敗に繋がりかねません。
企業理念をもって企業全体の方向性を定め、次に各事業の方向性と競合に対する優位性を構築し、さらに各事業を支えるバックオフィス部門が研究開発やマーケティングといった機能を考えるという、階層的な流れで事前に戦略を考えておく必要があります。
【図】経営戦略と3つの階層
経営戦略のまとめ.png)
また、戦略研究の第一人者であるマイケル・ポーターは、企業が競合他社に勝つために次の3つの競争戦略を事前に選択しておく必要性を説いています。
<ポーターの3つの競争戦略(基本戦略)>
コスト・リーダーシップ戦略 : 競合他社より安いコスト・価格で勝負する戦略
差別化戦略 : 自社のブランド、品質、技術などを高め、競合他社との差別化で価格競争に巻き込まれないようにする戦略
集中戦略 : 特定の地域や顧客などに特化し、それに経営資源を集中してニッチな市場で勝負する戦略
私は、上記のポーターの競争戦略に加え、「戦略的撤退」の撤退指標(※5)も事前に検討しておくべき重要事項だと考えています。
戦略的撤退 : 将来の反撃や他の重要な分野への資源集中を目的として、事前に撤退基準を定めた上で、計画的に身を引く前向きな経営・行動判断のこと
「見切り千両、損切り万両」という有名な格言は、速やかな決断が損失を最小限にとどめ次なる投資チャンスを生むという、数多の成功や失敗を経験してきたであろう相場の世界の先人たちの貴重な教えです(※6)。
玉砕のみを美徳とせず、力を温存し再起を図ることも賞賛されるべき勇気ある戦略的な行動ではないでしょうか。
生きるうえで最も偉大な栄光は、決して転ばないことにあるのではない。
転ぶたびに起き上がり続けることにある。
ネルソン・マンデラ(南アフリカ共和国大統領)
[出典・注釈]
※1 (出典)鈴木博毅、2024、「「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ」、ダイヤモンド社、pp.43
※2 (出典)鈴木博毅、2024、「「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ」、ダイヤモンド社、pp.39-43
※3 「経験曲線効果」とは、同じ作業を繰り返すことで効率が上がり、時間やコストが徐々に減っていく現象で、1960年~1970年代にかけてボストン・コンサルティング・グループの調査研究からその効果が様々な産業で確認された。
※4 (出典)鈴木博毅、2024、「「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ」、ダイヤモンド社、pp.58を基に筆者加筆・修正
※5 戦略的撤退の撤退指標は、損失が拡大してからではなく、事業開始前にあらかじめ定量・定性的なルールで設定しておくことが重要です。撤退指標として、貢献利益のマイナス、KPI(重要業績評価指標)の未達成、投資回収期間の大幅な遅延、損益計算書(P/L)の営業利益率の悪化、市場環境の変化(市場成長率・シェアの低下)などがあげられます。
※6 「見切り千両」とは、損失が少ないうちに見切りをつけることは、千両(大金)の価値があるという意味です。また「損切り万両」とは、予想外の値下がりなどで含み損を抱えた時に損失拡大を防ぐために、ある程度の損を覚悟してスパッと売却することはさらに価値があるという先人の教えです。
[参考文献]
・笠原英一、2014、「[改訂版]経営のことが面白いほどわかる本」、KADOKAWA
・鈴木博毅、2024、「「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ」、ダイヤモンド社

タケシタの公式Facebookにいいね!する
タケシタのサービスについての創意工夫や仕組みについて説明します。
さまざまな専門家の方々に、「賢人の思考」と題しコラムを寄稿いただきます。
noteでも記事を連載中です。ぜひ合わせてご覧ください。
弁護士・行政書士をはじめとする各種専門家にサポートして頂き、より良いサービスを提供できる体制を整えてまいります。
竹下産業の広報部からのレポートです!
オフィスの情報媒体処理は、
タケシタにお任せください
03-3887-1761
営業時間/9:00~17:00
東京都(保管積替含む) 千葉県 神奈川県 埼玉県 茨城県 栃木県 群馬県 山梨県 福島県 長野県 静岡県 愛知県 大阪府
東京都 千葉県 神奈川県 埼玉県 茨城県 栃木県 群馬県 山梨県 福島県 長野県
※「T-CUBE」は竹下産業株式会社の商標登録です


